対談・カップ10と家族と🌈
今回のお題は【カップ10】です。

永坂)【カップ10】が出ました。20世紀初頭に描かれた絵ですから、お母さん二人やお父さん二人というペアはいません。家族は、「お父さん・お母さん・子ども」で一セットです。
中川)タロットで家族を表すのは、これと【ペンタクル10】の2枚です。

【ペンタクル10】は土台、例えば血縁とか一族とか、それから今後どう継続していくか、生活基盤というものを重要視しているんだ。【カップ10】は継続には関係ない。今この瞬間この家族が満ち足りているか、という点だけを指摘している。
永坂)生まれた家が代々長く続いている醤油屋で、「醤油屋なんて継ぎたくないよ」と言っていても、家業は継承するものだ、との圧力やほのめかしといった空気感が見え隠れするのが【ペンタクル10】、「家業が醤油屋だろうと米屋だろうと、日常を大事に楽しく過ごす」というのが【カップ10】、という解釈でいいですか?
中川)そうそう。そんな感じ。2枚のカードは絵柄が随分と違うでしょ。家が石造りの重厚なものか、そうでないかとか。【カップ10】のメインの絵柄は虹です。さっさと消えてしまうもの。今この瞬間に楽しむもの。
永坂)丘の上の家の屋根が赤いのは、何か意味があるのでしょうか。
中川)うーん、どうかな。家は休息とか安息の場で、魂を休めるという大切な場所なんだ。屋根が赤いのに意味はなさそうだけど、赤は気持ちを高める色だから、良い色なんだろうね。「家の中に何か赤いものを置くと運気が上がる」と言われているよね。
永坂)先生は何か赤いものを置いていらっしゃいます?
中川)あるよ、昔シベリアに旅行した時に買ったマトリューシカ(爆笑)。一番スタンダードなデザインのやつ。
永坂)赤いスカーフのやつでしょうか。可愛いことを思いつきましたね。あれを棚か何かにたくさん並べているんですか(注・マトリューシカ人形は入れ子になっている)。
中川)いや、一つにまとめて置いている、たくさんだと邪魔だから(笑)。
話を【カップ10】に戻すと、この夫婦は背中を向けているという点に着目して欲しい。これは世間の目を気にしていないというか、世間から認めてもらおうという気持ちが薄いからなんだ。「自分たちが平和だったらそうでいい」と。
永坂)媚びない。気張らない。自然体なんですね。子どもたちもそう見える。
中川)ウェイトさん(注・ライダーウェイト版タロットのプロデューサー)は、「子どもたちは虹に気づいていない」と書いているんだ。幸せであるとの自覚は得にくいんだと。
永坂)昔読んだ「幸せの青い鳥」とか、先生のお気に入りの小説「アルケミスト」と、ばっちり重なりますね。昔も今も、日常のふわりとした幸福感は実感しにくいものです。
【カップ10】には、家族が皆健康だとか、雨露をしのぐ家があるとか、そういったものに感謝しなさいよ、というメッセージが隠れているのかも。
中川)日本には、謙譲の美徳として、自分の家とか子どもとかを卑下す習性があるよね。それは決して悪いことじゃないけど、肯定的に捉え、その上で感謝の気持ちを持つ、ということが難しくなる。
永坂)よそから「ものすごく絵が上手ね」と自分の子を褒められても、「でも計算とか体育とか、てんで駄目なのよ」なんて言います。
たとえ勉強や運動が苦手でも、いじめを受けず、してもいなく、毎日元気に学校に通っているのであれば、自分の息子が置かれている境遇をありがたいと捉えるべきなのに、卑下していると、感謝する機会が失われると。
私は欧米のドラマをよく見るんですけど、夫婦の間でも、親と成年になった子どもとの間でも、電話の最後に「アイラブユー」なんて頻繁に言う習慣はすごいなあ、と感心します。思いっきり日本文化とは相容れないでしょ。謙譲という感性を否定するのは誤りだけど、それが家族を大事にする気持ちを削いでしまってはいけませんね。
中川)日本人にとって家族は、一体感より存続が重要視されてきて、そんな価値観は古いと薄れて行っているけれど、なくなってはいない。まだまだ【ペンタクル10】の家族観の方が受け入れやすいって、感じだな。
永坂)代々長く持ち続けてきた価値観は、子孫たちの遺伝子の中に潜み続けるんでしょうね。
【カップ10】の空があまり青くないのは、気にしなくて良いのでしょうか。
中川)虹があるし、家族四人の様子がこの具合だから、気にしなくていいと思う。それに、パメラさんが描いた(注・イラストレーター)原版は失われてしまったから、元の色の濃淡はわかりようがないんだ。
永坂)仏像は一千年前ものでも実在していれば、表面を調査して最新鋭の分析機にかけて、消え失せた絵の具の内容物を判明させられます。でも絵のオリジナルが失われているのであれば、手の打ちようがありませんね。タロットのオリジナルには辿れない。
中川)出版社によっては、色味が濃いのがあるのだけど、あまり濃いのはうるさい感じがして、好まないな。
永坂)でもあの時代は照明器具がしょぼかったし、灯りをけちけち点けたでしょうから、絵の具の色味は強くしたかもしれませんね。曇りや雨の日は、昼間でも室内が結構暗いじゃないですか。
中川)そうだね、案外強い色使いだったのかもね。原版が残っていないのはつくづく残念だ。
2026年9月 横浜マクトゥーブにて