対談・ソード2

今回のお題は「ソード2」です。
中川)【小アルカナ2】のキーワードはバランスです。中でも【ソード2】は、「対立するもののバランスをとる」。
永坂)揉め事の匂いがしますね、今どきです。「ロシア対ウクライナ」だったり、「ハマス対イスラエル」だったり。それにしても、途方もなく長そうな剣ですね。実際どれくらいなのか、見当がつきません。
中川)人物に対して剣が不釣り合いに大きい。ソードは思考のツールのシンボルであるという前提から始めると、「今考えを巡らすには、内容がひどく重いよ」という感じ。占いでは、その思考を一旦中断する必要がある、という時に出てくるカードです。
永坂)だから、この少女について「二つの軍隊の剣を預かり、休戦を促す」という解釈があるのですね。戦いを終わらせるではなくて、休戦に持ち込むのが目標だと。「動くな」だと。
中川)後ろの海は感情を、岩礁は怒りだったり悲しみだったりを表していて、「考えをやめる対象物」というもの。目隠しをしているから、それらを見てはいない。
永坂)すごろく的に考えれば、「一回休み」なんでしょうけれど、リラックスとはほど遠いのは明らかですね。緊張は続く。
中川)そうなんだ。同じ休むでも【ソード4】とは区別しなきゃいけません。【ソード4】の兵士は自完全に剣を手から離しているでしょ。注意とか警戒をしなくて良い状況下にいる。
【ソード2】の少女はしっかり掴んだまま。考えることは休まなければいけない状況なんだけど、警戒は必要。
石の台座は、現実世界にしっかり根を下ろしている証拠で、目隠しをしていて現実から目を背けてはいるんだけど、自暴自棄になったりはしない。思考も行動も現実的。
永坂)現実を見たくないのだけれど、どちらかというと、今のこの時間は現実を横に置いて「ちょっと待っててね」という感じなのですね。
中川)さっき、岩礁は怒りとか悲しみといったものと言ったよね。これらに振り回されてはいけないから、目隠しをして静かにしているんだ。
永坂)同じ目隠しをしているカードに【ソード8】があります。こちらは危機感迫りくるという緊張感が漂っていて、恐ろしい結末が近いのかも、との想像もできます。【ソード2】はぬかるんでもいない綺麗な地面に置かれている石の台座に座るという、安定を確実なものにしています。やはり警戒はしなくてはいけないけれど、危機感とは違う。
中川)【ソード2】の目隠しは、自分で積極的に現実を見ないようにしている。【ソード8】は現実から逃げている。
永坂)【ソード2】の目隠しは瞑想とまではいかなくても、集中力を高めるため?
中川)そうそう。そんな感じ。
永坂)身の丈に合っていない長さの剣を、この少女は胸の前で交差して抱えていますね。心を閉じている、ということでしょうか?
中川)そうね。他者の意見は聞かない、という感じかな。反抗的ではないいです。今は外からの声は聞かないといったところ。それでもって、今は動かないのが良いとわかっている。
永坂)この少女は現実的な考えをする人であるからこそ、ここで一旦全てストップということになった。喜怒哀楽の表現は控えめで、余計なことはしない人という印象です。服装は恐ろしくシンプル。
中川)【ソード2】には、心理的な苛立ちはまったくないです。
永坂)「行動も思考も止めなきゃいけないのなら、従いますよ」って感じですか。
ところで月は三日月ではなく、月蝕の進行中と言われています。これは欠けて行く途中なのか、満ちて行く途中なのか、どう思われます?
中川)これは欠けて行く途中と僕は考えます。一度真っ暗になって、そして戻って来る。
永坂)月の形が完璧に戻ったところで、この少女は立ち上がって行動をとる?
中川)その仮説はアリだと思う。月蝕だから、そう長い時間を要するわけじゃないんだ。だから、この少女が思考と行動を停止している時間もそう長くはないんだ。
永坂)ありふれた一般家庭出身といった印象の少女なのに、対立する軍隊のバランスをとろうとするというのは、実は軽んじてはいけない飛び切りな何かを秘めた人物なのかも。
中川)ジャンヌダルクも農民の娘だ!この少女は、戦いに出る前のジャンヌダルクなのかも!
永坂)月蝕が終わったらところで、このカードは逆位置の意味合いを持つ。少女は家に帰って着替えて、戦いに行く。行きたくなかったけど、そういう結論に至ってしまったから行く。
中川)そんな風に、否応なく決断していかざるを得ない、というのが【ソード2】逆位置。不本意ながらも巻き込まれるんです。自分で望んで行くのなら、【ソード4】逆位置。
永坂)ジャンヌダルクは数回「神の声を聞いた」と公言していました。だから【ソード2】正位置の思考停止の時も、神のお告げを聞いたのかも。
本日の対談のハイライトは、【ソード2】の少女はジャンヌダルクだった、という仮説が生まれたことでした!
2025年2月 横浜マクトゥーブにて