「大アルカナのカード:【X運命の輪】」
インタビュアー)今回は【X運命の輪】を取り上げます。
中川)正位置では「チャンス到来、行動する」、逆位置では「チャンス来ない、動かない」、という単純明快なカードです(苦笑)。
運命は宿命という変えられないものと、立命という変えられるものから成り立っていて、人は誰しも自分の考えや他人からの影響のもとに、変えられるものを変えて行くよう考えます。
変えるためには、行動を起こすタイミングがとても重要で、それを提示するのが【X運命の輪】です。
インタビュアー)絵柄チェックをいたします。描かれているのは天使と動物ですが、メルヘンと呼べる雰囲気はなく、奥深く複雑な何かが隠されていそうな気配を感じます。
中川)四隅にいるのは、天使と鳥と牛とライオンです。犬みたいのは、テュポンという説とアヌビスという説があって、どちらも死を司る神様。蛇は時間を司るとも、霊的成長のシンボルとも言われています。
テュポンなりアヌビスなりは、輪に沿って一生ぐるぐる回り続けるしかない。我々自身を示しているのかな。
輪の頂点に居るスフィンクスは、剣を持っています。理由は諸説あって、輪廻を断ち切るとか正義をもって裁くとかが有力です。敵意はありません。
【X運命の輪】は、人間が描かれていないカードの一枚です。世の中には人智を超えた、自分たちには手に負えない力が働いている、という教えです。
インタビュアー)四隅にいる彼らは何を読んでいるのでしょう?
中川)輪の中に文字が見えますね。アルファベットをTから時計回りに読むとTAROT(タロット)、逆回りに読むとTORA(トーラ:モーセの五書)です。彼らはトーラを読んで、どう生きるかを学んでいると想像します。
インタビュアー)意味合いをネット検索すると、正位置では転換点、幸運の到来、チャンス、変化、出会い、解決、定められた運命、といった解釈が得られます。
中川)僕は解決とは読みません。打開策が見つかるくらいです。解決だったら、【VII戦車】【XI正義】【XXI世界】あたりが示すはずです。
インタビュアー)逆位置は、情勢の急速な変化、別れ、すれ違い、解放、不幸、悪化、不都合、といった解釈です。先生の「チャンスは無い」「チャンスを逃す」の他に付け足すとしたら、「歯車が狂ってしまう」といったあたりでしょうか。
中川)そう。歯車が狂い、ちぐはぐ感が生じるといった程度。すれ違いとか不都合といった曖昧さは当てはまるけれど、不幸や悪化といったレベルとは違うと僕は考えます。急速な変化であれば【XVI塔】が、別れだったら【ソード3】がふさわしいはずです。
ちぐはぐ感に話を戻すと、「転機を得たとしてもぱっとしない結果しか期待出来ないから、今は動く時ではない」といった捉え方で良いです。依頼者に落ち度があるとか、他人に邪魔されるといったことではないから、悲観的になる必要はありません。
インタビュアー)評判通り単純明快なカードですが、特に留意すべき点はあるのでしょうか?
中川)結論に【VII戦車】や【XXI世界】が出た時は、もともと依頼者は気持ちが盛り上がっている、または素直にその気になる、という傾向があります。けれど【X運命の輪】が出た時はそうでもなくて、「え、イケイケなの?」と戸惑ったりするケースがあるんですよね。
占いの結論にこのカードの正位置が出たら、占い師は「チャンス到来、どーんと行っちゃいましょう!」と言うしかない。マイナスになることも足踏み状態に陥ることも決してないから、どーんと行っちゃって大丈夫です。
けれどこのカードはチャンスの有無を示しているだけで、どれ程の成功をもたらすかは教えてくれません。成功がプラス10になるかプラス100になるか、それ以上か、まったくわからない。恋愛の相談だったら、恋愛の成就は宣言してくれるけれど、結婚まで至るのか、結婚し続けられるのか、保証してくれない。
占い師がその点を充分説明しないまま依頼者の背中を押してしまうことは、その人の未来の運命を狂わせかねないわけで、とても危険です。物理的心理的な準備が出来ていない依頼者であれば、特にそうです。
インタビュアー)「結婚にはこぎつけられる、けれど平穏な結婚生活をし続けられるとは限らない」「難関校に合格出来る、でも誇らしい成績を収めて卒業出来る保証はない」と、冷静に受け止めるべきなのですね。
中川)カードの意味合いに「定められた運命」というのがあったけれど、そういう概念は誰でも感じますよね。
人智の及ばないところで何かの力は確実に働いているわけで、人々の生活はそれらに左右されてしまう。変えられないものには素直に従い、変えられるものは努力して変えて行けば良い、と【X運命の輪】は導きます。
2021年2月24日 秋葉原マクトゥーブにて