「大アルカナのカード:【XI正義】」
インタビュアー)大アルカナの連載は、折り返し地点に到達しました。今回は【XI正義】を取り上げます。
カードの意味合いの一般的な検索をすると、正位置では公正、公平、善行、慈善、誠意といったものが見つかります。
逆位置は、不正、不公平、偏向、被告の立場といったあたりです。
先生の解釈は、正位置では公平さ、倫理にかなった行動、法律上の解決、平等で偏見を持たない、すべてのバランスを取る、真実を認める、白黒決着。
逆位置では、公平さ公正さを欠く、不当な扱い、敗訴、バランスを崩す、です。
中川)僕は公平と公正さの二点を大きく読みます。それから法律。商売の契約とか、結婚とか。
インタビュアー)ネット上に検索サイトはいくつもありますが、恋愛の占いで結論に【XI正義】正位置が出ても、結婚に至ると言い切るものはそう多くはありません。
中川)僕は言い切ります。「このパートナーと末長く一緒に暮らせますか」と占って、【II女教皇】【XIX太陽】とかが出れば、「はい、暮らせます」と言えるけれど、結婚という法的な契約まで行くかと尋ねれば、必ずしもそうではない。
「事実婚か法的な結婚か」をはっきりさせるのが【XI正義】です。
インタビュアー)類似するカードを探してみたのですが、見つからなそうです。外見のみで判断すると、【V法王】がありますけど(苦笑)。
中川)似ているカードはありそうでないですね。【XI正義】は白黒決着っぽいわけで、幅広い解釈は出来ません。相手の性格や手の内を考慮しての個別の対応もしない。約束事という点で、【XI正義】と【V法王】にそれなりの類似性はあるかな。
【XI正義】はハンコなり署名なりがある、かっちりとした証書などで約束に拘束力といったものを持たせる。
【V法王】は「伝統や常識にのっとる」が原則ですから、信頼は十分なんだけど、証書になってはいない、紳士協定みたいな約束も含みます。
インタビュアー)【XI正義】の信条は「情に流されない」ですから、冷たそうな印象です。その割には、描かれている人物の顔は無表情ながらも冷たくはない感じがします。
中川)カードに描かれている剣は、青く塗られています。なぜかというと、裁きには慈悲が必要だから。
「青く塗られた剣」は慈悲を示します。犯罪者が有罪になっても、情状酌量とか執行猶予とか、模範囚は収監期間を短くしてもらえるといった処置がありますね。法の裁きは絶対的に無慈悲というわけではないんです。
絵柄の話を続けます。もう片方の手は天秤を持っています。天秤は、神話の世界で死者の魂を測る道具と言われていて、法で裁くという行為の証でもあります。
世界的に、裁判所といった法律を扱う場には、天秤が描かれていますよね。
冠をかぶっているのは、この女性が古代神話の女神だから。幕の向こうは黄色。太陽の祝福が待っています。
インタビュアー)公平さについて説明をお願いします。
中川)【XI正義】はバランスだけを説いているのではなく、バランスと評価という二つの要素を示しているのではないかと考えます。
自分が自分をどう見るかと他人が自分をどう見るか、って大きく違うものです。それは当たり前だけど。その二つのバランスを取る、取りましょう、と伝えるのが【XI正義】。
ただし、正位置に出ても失望する可能性があります。過大評価されている人が、実はそうでもないとの正体が暴かれてしまうとか。
最近になって、心理のボジションにこのカードを出すのは「公正公平に扱われたい」という願望の他に、「社会参加したい」も含むのではないかと感じています。「自分も社会の中で公平に評価されたい」と。例えば長く引き篭もっていた人が再び踏み出す際とか。
インタビュアー)最後に、偏見という解釈に言及します。「対等であれ」と示されているのですね?
中川)そうです。相手と対等であるということは「目線を同じ高さにする」ということ。【カップ2】もそれを如実に示しています。
公平であるも対等になるも、とても難しい苦しい目標です。人間って、どうしても自分は楽をしたい、他人より有利になりたい、と願うものですよね。
年齢、出身、学歴といったものを取り上げての偏見は根強く存在するし、人種の違いが絡めば、他人の肌の色でいちゃもんをつけてしまう。
それらをぐっと堪えて公平公正を保ちなさい、と【XI正義】は要求しますが、忍耐を強いて知らん顔ではなく、ご褒美を用意してくれています。
カードの背景が黄色でしたね。公平さを貫いた先には太陽の祝福、つまり安らぎが待っていると、【XI正義】の女神は示しています。
2021年3月27日 秋葉原マクトゥーブにて