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タロット製作者ウェイトさんの話

インタビュアー)今回のお題はスミスウェイト版(またの名をライダーウェイト版)タロットカードの製作者である、アーサー・エドワード・ウェイトさんを取り上げます。
ウェイトさんは1857年、日本では元号が明治に変わる少し前という時代に、ニューヨークで生まれました。パメラさんとは共通項が二つあって、一つは活動の場がニューヨークとロンドンの二ヶ所だったということ、そして「黄金の夜明け団」なる組織に属していたという点です。

中川)ウェイトさんは著述家で、結構たくさん本を出しています。タロットの解説書も出しました。分厚くはなかったけど、わかりやすいものだったみたいです。日本語版もありましたが絶版になったと思います。

インタビュアー)この方は、隠秘学(オカルティズム)、秘教、魔術のあたりを書いています。その上小説も少々。多才です。

中川)日本で出回ったのは、タロットの解説書だけだと思います。

 

インタビュアー)この解説書はタロット78枚全部を説明した最初の解説書らしいです。以前のものは、大アルカナだけを取り上げていたとか。

中川)スミスウェイト版の制作にあたり、ウェイトさんがパメラさんに指示を出したおかげで、それまで数字しか描かれていなかった小アルカナのカードにさまざまな絵柄が描き込まれました。

インタビュアー)「大アルカナの絵柄はウェイトさんが細かく指示を下したけれど、小アルカナはパメラさんが自由に描けた」、と前回のインタビュー欄でも触れましたよね。つまり、それまで脇役に徹することを強いられていた小アルカナが、ウェイトさんによって地位が格段に引き上げられた。どんな経緯なり意図なりがあったのでしょうか?

中川)スピリチュアルなものを研究し続けた結果、実は日常の生活が大事と気づいたんじゃないかな。それで、日常を表す小アルカナのカードの重要性を認識した。想像ですけど。

 

インタビュアー)圧倒的な男性優位の時代なのに、黄金の夜明け団は男女平等を実践していたらしいです。男女の格差の是正を肯定していたウェイトさんは、大アルカナと小アルカナの格差も意識したのかも。

中川)そこでパメラさんを見つけて、彼女に自由に描かせ、彼女は彼の期待に十二分に応えた。運命的な出会いでしたね。この出会いがなかったら、スミスウェイト版という名作は生まれなかった。

 

インタビュアー)大アルカナのカードの描き方をイラストレーターに細かく指示できたのですから、彼は単なるプロデューサー以上の存在であったのは明らかですね。

 

中川)オカルトとかスピリチュアルのエリアにおいて、知識や経験値は豊富だったでしょう。そういう人だから、パメラさんの才能を見出せたのだと思う。

 

インタビュアー)「ウェイトさん冴えてるな」、と感心するカードを挙げてください。

中川) [大アルカナ・力]と[大アルカナ・審判]です。

【Ⅷ力】がすごいと思うのは、ライオンを、力ずくではなく花飾りで繋ぎ止めていること。ここでの力は腕力や武力とは無縁なのです。
【ⅩⅩ審判】には、たくさんの人が救済される様子が描かれています。ウェイトさんの時代、西洋の知識層には大乗仏教が知られていたから、仏教の影響があるのだろうと想像しています。

 

インタビュアー)黄金の夜明け団を辞した後、この集団は分裂・解散しました。その後ウェイトさんはいくつもの組織をつくっては分裂・解散を繰り返したみたいです。

中川)知識豊富な学者ではあったけれど、組織の運営には向かなかったみたいね(笑)。リーダーとしては中途半端だったのかな。まあいいじゃない、立派な仕事をやってのけたのだから。
ウェイトさんも黄金の夜明け団も、魔術をすごく重要視していました。誰のものか記憶が定かではないのだけど、魔術の定義は「意志により意識に変革をもたらす業である」という言葉があります。
魔法と魔術を取り違えてはいけないんです。「鉛を金に変える」でも「杖を蛇にする」でもなくて、「自分の意識を変える」が魔術の真意なのだと言っているわけです。

 

インタビュアー)魔術で自分を向上させる?

中川)自分の魂を向上させる、それによって周りが変わって行く、そして社会が変わって行く。ウェイトさんは怪しいものが好きで研究や結社の創設に情熱を注いだのではなく、世の中をより良いものにしたかった人だった、と僕は確信しています。

2023年9月22日 横浜マクトゥーブにて
アーサー・エドワード・ウェイト氏の写真はウィキペディアからです

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