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対談・ペンタクル5

今回よりインタビュー欄は、「主に対談・時々インタビュー」という形式に変わり、対談は占い師の永坂青蓮(ながさかしょうれん)さんに相手役をつとめてもらいます。

中川)考えた末、対談のテーマは「ぱらっと一枚開いたタロットカードについて語る」にすると決めました。そんなわけで、よろしくお願いします。カードを引いてください。

永坂)予習ゼロでの対談ですか、うーん、厳しい。鑑定力・経験・知識のすべてにおいて先生に遠く離れている私ですが、頑張って先生に食らいついて行きます。よろしくお願いします。

【ペンタクル5】が出ました。雪景色です。結構降っています。タロットで季節感がはっきりしているのは、ひどく珍しいケースじゃないかと思うんですけど?

〜二人、カードを広げて季節感を調べる〜

中川)雪が描かれているのは、他には【隠者】があるか。

永坂)でも【隠者】は山の中に立つ姿だから、あれは万年雪とも受け止められません?そうだと、季節はわからないですよね。

 


中川)あ〜そうだね。季節ははっきりしないね。考えたら、春や夏を表すカードなんてないなあ。【女帝】の小麦やトウモロコシが秋を表すか。でもそれくらい。


永坂)薔薇が描かれているものは数枚あります。薔薇は初夏ですよね。他に花はいろいろなカードに描かれていますが、どれも季節はわかりづらい。

 

中川)そうか、【ペンタクル5】は、最も顕著に季節感を示すカードと言えるね。
僕はこのカードは、楽園を追放されたアダムとエバとも読めるんじゃないかと思うことがあります。後ろの建物は教会なんだけど、これが楽園。

永坂)なるほど。占いで出た時は、この二人を自分に当てはめるんですよね?

 

中川)そう。二人を夫婦とか親友同士とか読む占い師もいます。でも二人と数を決める必要はありません。そして、貧しさや居場所の無さとか、病気とか怪我と読む。

永坂)このカードではっきりと目立つのは、白と黒の強いコントラストです。タロットの絵柄では、雲を除いて白という色はあまり登場しませんよね。ここではしっかり存在していて、背景は黒に無数の雪の粒。
雪がなくて地面が青々とした草地だったら、随分と印象が違うでしょうね。抱えている辛さが、ここまで厳しく見えないと思います。真冬という景色が、【ペンタクル5】が示す辛さをデフォルメした?

 

中川)そうだね。正位置では冬が示す絶望感を、逆位置では春に向かうとの希望を示している、と捉えていいんじゃないかな。


永坂)【星】正位置の「夜が明けて朝になる」と【ペンタクル5】逆位置の「冬が終わり春が来る」が、ここで綺麗に並びました・・・と考えてあってますか?

 

中川)いいと思います。
もともとペンタクルというスートは時間の経過が遅いという特性があるので、寒さも苦しみもしばらく続くね(苦笑)。残念ながら、ペンタクル5逆位置の「春は近づいている、辛さは軽減して行く」も同じくゆっくり。

永坂)辛いなあ。どっちにしても我慢のしどころなんだ。

 

中川)小アルカナは日常を示すから、覆すのはなかなか難しいんです。他人と関わっている以上、自分が変わっただけでは状況を変えられないというケースは結構多い。
貧しさを引き合いに出すと、【隠者】逆位置でも示します。でもこれは大アルカナだから、表すのは心の貧しさ。それは個人の心の持ちよう次第で、案外すんなりひっくり返せる。けれど【ペンタクル5】が示す貧しさは現実的なものだから、心構えだけで解決できるものではない。

永坂)怪我や病気もそうですね。気合を込めたり人との接し方を変えただけで、傷が治ったり腫瘍が消えたりはしないもの。

 


中川)【ソード3】も辛さを示すカードだけど、こちらは人間の本質をつく辛さであって、他者との関わりを含まない場合もあります。
【ペンタクル5】は人間関係が絡んでいて、社会にいられない、社会で真っ当に機能できない、といった悲しみを含んでいるんだな。
それはどういうことかというと、中世の教会は、祈りの場だけではなく、イベントや趣味のサークルの場でもあったから。教会は社会そのもので、そこから追放されるとは、とてつもなく厳しい。

永坂)中世の西洋では、幼児洗礼から始まって、家族一同でずっと同じ教会に毎週、死ぬまでずっと通っていたわけですよね。女性は嫁いだら、嫁ぎ先の教会に移ってその後ひたすら、です。
教会には現代の人々には想像もつかない濃密な人間関係が確立していたのでしょう。それは決して良いことばかりではなかっただろうけど、保護といったメリットが存在したはずです。そこから離されるのはまさに大事件。二人暮らしの家を閉じて出て行くも事件だけど、大家族から二人だけ追放というのもひどく劇的な展開なわけで。

 

中川)【ペンタクル5】には「信仰の喪失」という意味もあって、それも絶望に結びつく要因。先祖代々当たり前に受け入れてきた信仰に喪失感を抱くのは、大変なことです。
とはいえね、災難と嘆いていた事柄が、後になって成功や喜びを呼び寄せた、と気づくことは、誰しも多少なりとも経験あるはずです。
占いで【ペンタクル5】正位置が出た時には、必ずそのことを思い出して欲しいです。

2024年3月22日 横浜マクトゥーブにて

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