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大アルカナのカード:【Ⅵ 恋人たち】

インタビュアー)【Ⅵ 恋人たち】の絵柄だけを見ると、「立派な天使様が味方についているから、何の努力をしないでいても恋愛は成就する」というお気楽な印象を持ってしまうのですが、そうではないらしいですね?

中川)残念ながら、そうではありません(笑)。
占いが片思いの恋愛を巡ってのもので、最終結果に【Ⅵ 恋人たち】が正位置で出たら、「成就の可能性は限りなく高い」とは読みますが、そこまでですね。僕は成功とか成就とか言い切ることはしません。言い切るためには、【XIX太陽】【XXI世界】【カップ10】などが出ます。そして、【Ⅵ 恋人たち】が届けるメッセージを恋愛や結婚に限定するのも正しくないと考えています。

インタビュアー)そのあたりを掘り下げる前に、絵柄の説明をお願いします。

中川)二人の人間はアダムとイブと言われています。
裸は純粋無垢の象徴です。裸でいるのを恥じていないから、ここにいるのは善悪を知る前の彼らです。
蛇は誘惑の印。蛇が巻き付いている木は善悪の木、もう一本は命の木です。遠くに見える山は、二人がいずれ到達するべき目標を示しています。
真ん中にいるのは大天使ラファエル。ヒーリングパワーの持ち主です。僕自身は「大いなる力」と捉えますが、一般的に言えば天使。人間と神とをつなぐ存在です。

 

インタビュアー)雲がかぶさっていて、上半身しか見せていませんが、ラファエルは大天使と呼ばれるだけあって、見るからに地位が高そうです。

中川)天使の描き方には、上半身だけもしくは全身の二通りあって、【Ⅵ 恋人たち】【XX審判】にいる上半身だけの天使は天界でのランクが高く、【XIV節制】に描かれているような全身を見せている天使は天界における労働階層というか(笑)、地位は低めです。

インタビュアー)【Ⅵ 恋人たち】に描かれている二人は並んで立っていて、互いを見つめ合っていません。【カップ2】の二人は身体を向け合い互いを見つめ合っています。この違いはどう理解すればよろしいのでしょう?

中川)小アルカナのカードは日常という具体性を、大アルカナは魂のレベルという抽象性を持つとの概念の違いがあります。
【Ⅵ 恋人たち】の二人は見つめ合う必要はないのでしょう。
この二人には十二分な絆が出来ているから、互いの意思意向を確認する必要がない。【Ⅵ 恋人たち】が表す愛情は、日常性を持つ【カップ2】が表す愛情を超えているのです。

インタビュアー)このインタビューの冒頭で、【Ⅵ 恋人たち】の解釈を恋愛や結婚に限定し過ぎてはいけないという話をされましたが、実際、先生はキーワードとして、選択、閃き、絆の三つを挙げています。

中川)僕は選択という言葉を最も強く使います。正位置なら「正しい選択」逆位置なら「正しくない選択」。

なぜ選択かというと、愛って選択の連続ですから。恋愛だけでなく、親子や家族、組織や国家に対してなど、対象は様々ですが、どのような形の愛であれ、それを持続するためには、様々選択することが続きます。
閃きが選択を後押ししてくれます。
そして選択を続け選び取った相手には、強い絆を得るものです。日本でも昔から「ご縁がある」って言うでしょ。

 

インタビュアー)閃きは天使が授けるものでしょうか?

中川)閃きは天使がもたらすのではなく、宗教的に言えば神、そうでなければ天界の支配者とか「大いなる力」といった存在が、そうすると考えます。天使は人々を静かに見守る一方で、しかるべきタイミングで閃きを授けるという、伝令役をつとめるというのが僕の解釈です。
つまりこのカードが表す閃きは、人間のオリジナルの、自分の内部で湧き上がった閃きではなく、上から降りてくる閃きなのです。

 

インタビュアー)降りてくるというのなら、第六感的な現象ですね。どうすれば、そのような閃きを確実に受け止められるのでしょう?

中川)五感で感じられる現象が必ず得られます。
虫の知らせ以上の、実際に見えたり聞こえたりする前兆。たまたま付けたTVから決め手となるようなメッセージが流れたり、壊れないはずのものが壊れたり、新聞の活字がふと光って見えたり、とか。
【Ⅵ 恋人たち】は、そういった知らせが来るからそれを素直に受け止めなさい、と促しています。逆位置では、そういった知らせに気づかない、無視してしまう、ということです。人は誰も、無意識のうちにそのような知らせに対する感度を高めているものです。神社に行くとか、仏壇に手を合わせるといった行為は、そういうことです。

 

インタビュアー)選択、絆、閃き、と検証するに、やはり【Ⅵ 恋人たち】は恋愛を強調してはいけない、と納得しました。

中川)日本語訳が恋人となっている上に、描かれている人物が若い男女のペアだから、「この二人は恋人同士なのだ」と納得されてしまい、恋愛のカードとみなされてしまうわけで、それは不満です。
読み取るべきなのは、男女の愛でも親子でもない愛なんですよ。対象を絞らない、大いなる愛。そして天使に見守られているのは、「愛を重んずる人々」「愛を抱いて行動する者たち」です。

2020年9月23日 秋葉原マクトゥーブにて

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