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大アルカナのカード:【Ⅶ 戦車】

インタビュアー)【Ⅶ 戦車】は、若者が勢いよく突き進むというカードです。意味合いは、意志・野望を成し遂げる、競り合いに勝つ、臆することなく進む、といったものです。

中川)最終結果に出ると快いカードですね。まず基本的なイメージとして、城から出たという点に着目して欲しいです。
背後の街を古い環境と読んで、そこから離れて自立して生きて行きます。戦争に行くのではなく、自分の城を建てに行くというイメージです。

 

インタビュアー)絵柄の検証をするにあたり、まずこの乗り物は何なのか伺います。スフィンクスがつながれて、犬ぞりみたいにガラゴロひいているんじゃないのですよね?

中川)手綱はありません。スフィンクスは先導しているだけで、ひいてはいない。石造りだからスピード感なさそうだし、平地や起伏をどう走るのか、今ひとつわからない(笑)。
スフィンクスは、若者が城から脱出するのを手伝い終えて、今、一休みしているところです。後ろにちらっと水が描かれてあるでしょう。これは堀か川で、越えてしまった以上、後戻りは出来ません。前進という選択肢しかない。
逆位置になると、二頭のスフィンクスのバランスが制御出来ず、乗り物がまっすぐ進まない、と捉えます。自制心の欠落と読むこともあります。
車の正面に、鷲の羽根の飾りがついています。猛禽類は高貴さを示します。赤いのは独楽、呪術や占いの道具です。腰のベルトの歪みは、「それほど準備万端整えないまま走り出しても大丈夫」という暗示です。
若者は17,8才くらいでしょう。これから野望を成し遂げると約束されてはいますが、青春っぽさからは抜けていない、未完成さが残ります。一人前ではないから、大人の知恵はさほどない、若いゆえに魂の世界まで踏み込めてはいない、といった状況のままの勝利者です。持っていない要素は、これから会得します。

 

インタビュアー)モーガングリア版のタロットカードを開くと、【Ⅶ 戦車】に描かれているのは髭をたくわえた初老の男性です。他の版の人物画は年齢不詳な印象で、動物はスフィンクスではなく馬が描かれています。一般的に言って、解説には戦いというメッセージが含まれていますが、先生はそうは言い切りません。こういった違いはどう受け止めれば良いのでしょうか?

中川)そういった違いはいくらもあって、プロであれアマチュアであれ、占う際は自分でこれと一種類のカードを選んで占うしかないです。僕はライダーウェイト版を使っていて、これをもとにしての知識に僕独自の見解を加えた解釈をお伝えします。

 

インタビュアー)表千家も裏千家も武者小路千家も茶道であって、師事したい流派を自分で選べば良い?

中川)そんな感じです。

 

インタビュアー)【Ⅶ 戦車】における、他者との協調の重要性は?

中川)この若者は単独行動だから、自己満足という面も否めません。良い意味ですけどね。
同じく達成を表すカードに【ペンタクル10】があります。相違点は「分かち合い」です。【ペンタクル10】の成功者は富を家族や街と分かち合っています。

【Ⅶ 戦車】が結論や鍵の位置に出た時、「他者の目は気にしなくても大丈夫」とアドバイスします。この若者は我が道を歩むのだけど、突飛なことはしません。今までのように、この先もスフィンクスが導いてくれますから。

 

インタビュアー)この先もずっと?

中川)本人は自分の判断で行動していているつもりだけど、実はスフィンクスに護られ導かれているんですね。だから彼は「難関を何とか乗り越え達成する」ではなく、安全に我が道を突き進めます。

 

インタビュアー)【Ⅶ 戦車】が逆位置で出ると、一般的には失敗とか暴走と読みますが、先生は「ふらつきながら前進」とも読まれます。

中川)コントロールを失いはしますが、その吉凶は他のカードと合わせて総合的に判断します。時系列で逆位置が出た場合は、失敗とか参事とは捉えず、中断とか停滞とかと読みます。その程度です。
未来に逆位置でも、最終結果が吉なら、全く気にしなくていいです。誰しも新しいことを計画して行動したら、途中でふらついたりするのは当然じゃないですか。

未来が【Ⅶ 戦車】逆位置で結論が【ソード3】なんてケースなら、明らかに危険ですよね。それは大いに気にしなければいけない。

 

インタビュアー)このカードを「戦車」と呼ぶのは、なぜでしょうか?

中川)このカードの英語名はChariot(チャリオット)です。前回のトピックの【VI恋人(ラバーズ)】と同じく、チャリオットには妥当な日本語訳がないんですね。チャリオットは単純に乗り物と呼ぶのがいいと思います。
チャリオットはペルシャやローマ時代に戦士が戦う際に乗る車でしたけれど、その後は戦車競走の乗り物になったり、戦闘とは無縁の使い方もされたと西洋の人々は知っています。けれど日本人にはピンと来ない。ましてや戦車と訳されてしまうと、日本人はキャタピラで走る装甲車を想像してしまうから、この若者は戦いに行く、と決めつけがちです。
そういった文化の違いはたくさんあります。一見厄介そうですが、わかってくると楽しいですよ。

2020年10月26日 秋葉原マクトゥーブにて

 

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