対談・ワンドエース
今回のお題は【ワンドエース】です。

永坂)これも昔から先生が好きなカードですね。エースのカードには、雲から出た手がスートを掴んでいるというお約束があります。
中川)キリスト教絵画の描き方の伝統として、雲から手が出るとの構図は、恩寵(おんちょう・神の愛や恵み)の印だと言われています。エースの4枚の他に【カップ4】もそうです。人間よりも大きい何かがワンドを差し出している。葉っぱはほとばしる情熱とも言うけれど、生命を表しているとも考える。このワンドは流木といった枯れたものではなくて、生きているもの。

永坂)手前に川があって、緑地があって、山があって、丘の上にお城があって、奥に見える山は赤いから乾燥した荒れ地でしょう。この川は、【カップナイト】が渡る川と同じと捉えていいのですよね。

中川)そうね。そしてこの城は、占いの相談者にとっての望みを示しているんだ。転職や結婚といった目的。
永坂)【ワンドエース】が占いで正位置に出たら嬉しいけれど、先立って川を越えるというひと手間が必要なんですね。やらなきゃいけないことはある。
中川)そう、楽勝ではない。川を乗り越えて行かなくていいのなら、【カップエース】や【ペンタクルエース】が出るはずだと思う。ワンドは気力を示すから、【ワンドエース】は川を越えて未経験な領域に入るための気力が必要と示している。実績のない経験値のないことに向かって行くんだ。一からの出発は、嬉しいんだろうけれど大変なんだ。

永坂)先生は逆位置を「無理してでも頑張って行け」と読みますね。でも解説書のほとんどは、「うまく行かないからやめておけ」と言っています。これは先生が前から説明されているように、教典がない以上、個々のカードの解釈は占い師によって異なるわけで。
相談中なり後日なり、相談者から【ワンドエース】の解釈を巡って「これは間違っていませんか」と疑問を投げかけられた経験はおありですか?
中川)ないなあ。この考えで30年40年やってきて、特に何か言いたてられてはいないから、まあ良いんじゃない。占い師を選ぶのは相談者の自由だから、「この占い師には同調できない」と思えばそれまでのことでしょ。
今までの経験に基づく「エース逆位置の危険度合」というのがあって、ソードエースの逆位置は危険度が最大で「絶対やめておけ」だけど、ワンドはそこまでではないと考えている。
スートとしてワンドは火を示すから、棒の先に火がついていると想像してみて。【ワンドエース】の逆位置とは、火がついた棒を逆さに持つということになるよね。逆さに持つのは危ないと、即座にわかるでしょ。
永坂)松明(たいまつ・木切れやまとまった枝に火をつけた照明)持って夜道を歩くとして、足元が見えないなら、松明を足の方に向けなければいけない。そうすると火が手の方に上に昇ってきて危ない。けれどそうしないと前に進めない。
一般的な解説書に沿って読むと「逆さに持つと危ないから前に進むのをやめなさい」となるけれど、先生は「無理してどうにか足元を照らしながら進みなさい、注意深く進めば良い」と示される。ソードエース逆位置とは違って、ワンドエース逆位置には少しの猶予があるんですね。
エースの逆位置における危険度を順に挙げると、ソード、ワンド、カップ、ペンタクルでしょうか。ペンタクルは「お金が無い」とも読めそうです。
中川)そう、何を始めるにも資金は絶対必要。心構えや装備が十分でも、資金がなければスタートを切ることはできない。占いは現実に沿って考えるものだから。
永坂)ワンドエースはなかなか単純で、ここで話のタネがつきそうなんですが、どうしましょう?
中川)そうね、ウェイトさんは全部のカードの解説の本を書いているんだけれど、【ワンドエース】に限っては、ほんの数行しか書いていないんだ。
占いの相談者には、「情熱を持って突き進んで行ってください」としか言えないな。
永坂)それでもってあとは他の9枚を見て、この点に注意せよ、ここを伸ばせ、と見極めるだけですよね。うわあ、今月の対談はここで終わりですか。
中川)ウェイトさんにならって、「短めですみません」てなところだな(笑)。
2026年2月 横浜マクトゥーブにて