大アルカナのカード:【Ⅲ 女帝】
インタビュアー)描かれているのは、わずかに幼さが残る可愛らしいお嬢さんです。しかし人物として見ると、母親を示すカードです。成長・実り・充足感も意味します。
中川)妊婦とも言われています。服にはザクロの模様、盾には雌雄の雌のマークがついていて、生殖、女性という要素を全面に出しています。
手に持っている笏は豊穣のシンボルです。空の黄色も豊かさを表します。
小麦ととうもろこしが実っています。刈り取られた部分と、未だ刈り取られていない部分と、成長の過程を違えて描かれています。
【Ⅲ 女帝】は人を育むのが使命ですけれど、単純に成長させるではなく「生まれ変わらせる」「リセットさせる」という育み方と捉えます。指導ではないです。指導だったら【Ⅸ 隠者】がふさわしい。
インタビュアー)【Ⅱ 女教皇】との違いは?
中川)【Ⅱ 女教皇】は質問者に白黒決着を要求して、自身の内面を浮かび上がらせるような救済なのですけど、【Ⅲ 女帝】はその人物を丸ごとリセットという手法です。
「混沌したままでもいい、それは受け入れる」という、そのままを包み込む寛容さがあります。
インタビュアー)「お母ちゃん、出来が悪くてもおまえが好きだよ、今のままでも良いんだよ」という感じでしょうか。
中川)まあそんなところですかね。決して【Ⅱ 女教皇】は厳しくはないのだけれど、会いに行くとしたら、スーツを着た方がいいかなという風な感触はあります。
【Ⅲ 女帝】は服装にとやかく言いそうもない。部屋着で行っちゃってもオーケーなんじゃないかと(笑)。
インタビュアー)この図柄が描かれた時代は、十代後半で出産するのは普通だったはずです。現代では三十代半ばで初産というケースは多いから、このカードの女性はやたら若くて、少々違和感を感じがちです。
現代の時勢を意識した絵でタロットデッキをつくるとしたら、この人物はもう少し老けさせるのがいいかな、なんて考えてしまいます。
中川)若い若くないの判断基準は個人差で大きく異なるけれど、この女性は確かに若い。
いつだったか随分前に、熟女ブームって流行りましたよね。その時に女房に「もし年齢で区別するとしたら、幾つ以上が熟女って思う?」と尋ねられて、即答で27って答えたんだよね。そしたら速攻で女房に「あんたは今、世界中の女を敵に回した!」ってなじられた(爆笑)。
インタビュアー)あ〜最低です。反省モノです。話を本題に戻しましょう(笑)。
中川)実際の占いでの【Ⅲ 女帝】は、第一に、母親との関係や影響が問われる時に出ます。鍵の位置だったら、「上手くお母さんを巻き込んでください」とか。
母親は無関係という占いでは、充足感と読みます。仕事を占って、最終結果に正位置で出ても、「充足感は高い」だから、設計図通りにうまく進んで成果を出したというより、「望みは全て叶わないけど、満足します」でしょう。ここは【Ⅱ 女教皇】と似ています。
インタビュアー)逆位置となると?
中川)逆位置では母性、つまり母親の関わりの過多か不足を意味します。どちらと判断するかは、相談者に尋ねたり、占いで出た全部のカードを検証したりすれば、必ずわかります。
母性が絡まない占いなら、解釈は「充足感が得られない」程度で良いです。不満は明らかだけど、徹底的なダメージは意味しません。
インタビュアー)結婚という要素はどうでしょう?
中川)【Ⅲ 女帝】は結婚を示すと解説しているテキストは結構多いですけど、僕個人は、結婚に至るかどうかははっきりしないと捉えています。結婚するのだったら、【ⅩⅩ 世界】とか【ⅩⅠ 正義】といったカードが出るべきではないかと思いますから。「恋愛は実ります」「妊娠出来ます」「産めます」「シングルマザーでも大丈夫」が僕の解釈です。
インタビュアー)「出来が悪くても好きだよ」「充足感は高い」「大丈夫、産めます」と、【Ⅲ 女帝】は安堵感を与えてくれるのですね。
中川)占いに来るお客さんは緊張しているから、「今の緊張は終わります」と安心させられるのは嬉しいことです。
2020年6月24日 秋葉原マクトゥーブにて