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対談・カップ2

今回のお題は「カップ2」です。

中川)【カップ2】だ!一番好きなカードが出た!

永坂)誰が見ても、文句なしに気持ちの良い絵柄です。

 

中川)でしょ。とはいえ、いまだにこの二人はどっちが男性でどっちが女性かわからない(苦笑)っていうのが僕の正直な感想です。

永坂)どちらもトランスジェンダーっぽいというか、現実っぽさがないというか。タロットには、中性的な風合いの人物が結構多いですよね。高貴な身分であれば特にそうです。【カップ2】は、どちらがどうと性別を決めなくていいんでしょう。


中川)去年だったか、「ムーラン・ルージュ」を観たのよ。その時に登場したメッセージに、「生きている上での幸せとは、誰かを愛し、その人に愛されることだ」とあった。あの時に「ああ、これは【カップ2】の世界だ」と納得した。

永坂)真の幸福感を得るのには、やはり一方通行ではなくて双方向であるべきなんですね。温度差がないものであるべき、とも。

 

中川)【カップ2】の二人の目線の高さに目を向けてください。一致しているでしょ。これが平等感を表しているんだ。同じく思いやりを示すカードに、【カップ6】があるけれど、ここには上下関係があって、目線の高さがずれて描かれている。【カップ2】は目線の高さが同じ、つまり対等。

永坂)手にしているカップのサイズが違ったらどうなのかな、と考えたのですが、タロットデッキを眺めまわすに、カップは全部サイズが同じに揃えてあるのですよね。ついでに余計なことを言うと、ソードもワンドもペンタクルも、スートのシンボルはタロットカードの統一規格という具合に揃っていて、大小や長短に差をつけてはいないんですね。

中川)そういえば、どれもサイズに違いはないね。

 

永坂)今ふと思ったのですが、右側の人物と【大アルカナ愚者】の服装はちょっと似ていませんか?

中川)あ〜そうだね、そっくりではないけれど、かなり近いな。考えたこともなかったけど、結構似ているね、うんうん。

 

永坂)【愚者】の方がひらひらとした装飾が付け加えられています。この人物特有の、かけ離れて規格外なキャラという点を強調しているのでしょう。一方、【カップ2】の右側の人物は普通の人間で、もっと常識の中で生きている。

中川)この類似性ねえ・・・・・。僕はもともと、小アルカナの中で【カップ2】だけには、ちょっと特別なパワーがあるんじゃないか、と思っていたんだ。【愚者】は人智を超えたものに守られているから、好き勝手に動いても大丈夫という要素があるでしょ。この何かに守られているという部分は【カップ2】にも当てはまるんだろう、と思っていたんだ。
やはりパメラさん(ライダーウェイト版タロットのイラストレーター)はすごい。【カップ2】が持つ超越した感を、右側の人物の衣装を【愚者】に似せたことで仄めかしている!
【カップ2】が卓越したカードとの理由を説明しなきゃいけないね。なぜかと言うと、二人の上に聖獣が存在しているから。小アルカナで聖獣が描かれているのはこのカードだけ。この赤いのは、ライオンの頭と鷲の羽が合体したものなんだ。その下にハート型っぽく絡み合っているのは二匹の蛇。蛇も聖なる獣です。
聖獣が持つ役割は道案内、つまり「高い次元に導く」というものです。でしゃばりはしないけど、何かを訴えている。二人の後ろに山があって、一軒家が見えるでしょ。あれを「高みを目指す」と理解する。精神性であったり、行動力であったり。
占いの場に目を向けると、最終結果【カップ6】は、「二人はより親密になる」と捉える。最終結果【カップ2】は、「二人はより高い次元に進む」と捉える。

 

永坂)【カップ2】正位置は対等な恋愛を示すと同時に、対話、バランスの良いコミュニケーションを表す。逆位置はというと、対等でない恋愛、バランスの悪いコミュニケーション。
先生に習っていてびっくりだったのは、恋愛を占って、最終結果が良かったのに、鍵のカードがカップ2が逆位置で出たときのリーディングです。お決まりの「コミュニケーションを良くしましょう」だけでなく、「あえて対話を断ちましょう」と指導されたことでした。引き算的な助言も必要なんですよね。

中川)そう。「対話を深めましょう」なら正位置で出る。
また、対話はすれば良いっていうものではない。実際に日常を暮らしていて、そういうことって経験するでしょ?「しばらく静かに様子を見よう」とか「放っておくのが良さそう」とか。そういった視点を必要でしょう。
さっき恋愛という言葉が出たから、その話をします。結婚できるかと占って【カップ2】が出ても、万々歳とは言い切れない。この点は大事。まだ対話を続ける途中の段階です。結婚だったら、【カップ10】【ペンタクル10】【ⅩⅠ正義】【Ⅴ法王】【ⅩⅩⅠ世界】が出なきゃ。

永坂)恋愛を占って【カップ2】が出たら万全と思っちゃいますよね。手放しで喜びたくなるけど、もし結婚を意識しているのであれば、安心しきってはいけない。
中川)話は外れてしまうんだけど、最近思うことがあってね。日常を表す小アルカナは、56枚あるじゃない?でも人はこの56種類の日常を全部経験できるわけではないんだよね。七十と数年生きてきて、どれだけ経験できるのかな、とふと考えることがあるんだ。
誰しも【ソード3】は繰り返し経験するけれど、56種類を全部経験する人はいないだろうな。

僕自身はというと、【カップ2】は経験した。結婚したから【カップ10】も、このままいけば達成できるだろう。

でも家族構成は夫婦二人で【ペンタクル10】にしなかった。

56枚味わうことはできない。

永坂)ひたすら前進あるのみという気質なら、【ソード8】正位置を経験せずに過ごすでしょう。施すことに興味がないなら、施される必要がないなら、されたくないなら、人生は【ペンタクル6】とは無縁で終わるはず。

そのあたりを熟考すると、人生のあらゆる展開を明解に図柄化させたウェイトさん(ライダーウェイト版タロットのプロデューサー)のプロデュース力には、誠もって恐れ入ります。タロットデッキには種類がたくさんあって、絵柄が大きく異なるけれど、ライダーウェイト版は、飛び抜けてわかりやすい絵ばかりですよね。

さっき【カップ2】と【愚者】の2枚を並べて衣装を比べていて、作業中のパメラさんの机の上を覗いてみたかった、と思いました。どれほどの案が用意されて、どれがどうして採用不採用になったか、知りたいじゃないですか。「絵のメイキング映像」「決定会議のストリーミング」みたいなものがあって、複数の関係者が集まって、「これいいな」「私はこっちを推す」「俺は違うぞ」といった議論を交わしながら迷っているところを見る、なんて想像するとわくわくします。

中川)候補はたくさんあったんじゃないかな。絞り込むのは、結構大変な作業だっただろうなあ。

2025年5月 横浜マクトゥーブにて

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