対談・ワンド10
今回のお題は「ワンド10」です。
中川)今日は・・・、【ワンド10】が出ました。
永坂)うーん、明らかにつらそうですが、空は青い、良かった!と受け止めることにしましょうか。
中川)そんなところかな(苦笑)。このカードで重要なのは、遠くだけど家は描いてあるということ。ゴールはある、見えている、荷物は重たいけど全部運び切る、というのが正位置の解釈。運びきれず、途中で数本落としてしまうが逆位置。
この絵柄だから、占いで【ワンド10】正位置が出ても、お客さんはハッピーな顔はしないよね。占っている方も、手放しで「大丈夫です」とは言い切れない。ゴールは約束するけど、いろいろ微妙なカード。
永坂)奥歯に力が入ってしまうとか、そんな反応をしちゃいますよね。家業がつらいんだろうな、厄介ごとを引き受けさせられているんだろうな、NOと言えない性格なのかな、など想像してしまいます。
中川)いつも思うんだけど、タロットの教科書や解説本に、【ワンド10】が出た時は、アドバイスとして「数本の棒を下ろしなさい」と依頼者に伝えること、なんて書いてあるけど、そんなの現場で占っている方は絶対言えないことなんだよ。
下ろせるもんなら、とっくに自分で下ろしているから。下ろせないから占いに来るんだよ(笑)。「下ろしなさい」なんて言う占い師は、正直甘っちょろい。下ろせないで困っている人に対して、「さあこれからどうしよう」と一緒に考えるのが、占い師の使命です。
永坂)「一緒に抱えてくれる仲間を探しましょう」と言いたいところですが、少々無理がありますね。鍵に【ペンタクル3】が出てくれたら理想だけど、そうでなければ助けは来ない。助けが見つけられるなら、ほのめかす何か、【ワンド4】みたいに人が待っているとか、または荷車みたいなものが描き込まれているべきです。
中川)この人物の姿勢に注目してみましょう。抱えている棒が邪魔をして、先が見えなくなっている。先とはつまり前途。棒と棒の間からわずかに覗けるだけで、自分の前途がろくに見えていないとわかるでしょ。
「自分が抱えている棒で先が見えない」が、このカードのテーマの一つです。だから、「数本下ろしないさい」というアドバイスが成立しないでもない。でもやっぱり、もしできるのだったらという話。
永坂)同じような話で、棒を水平に抱えていたら、視界は遥かに良かったでしょうが、何か事情があって、水平にはできないんですよね。水平に並べられるものなら、とっくにやってる。
縄で括っていないのも、括れない事情があるからなんでしょう。ちょっとした力の入れ方の乱れで、ずりずりっとずれて行ってしまいそう。不器用な人には不利ですね。私だったら、全部投げ出して逃げます(苦笑)。
中川)棒は不安定で、前がろくに見えないんだから、いつ蹴つまずいて倒れてもおかしくない。背中は痛い、腰はガチガチ、助けは来ない(苦笑)。
永坂)肯定的な話題に移りましょう。すべての棒に青々とした葉がいっぱいついています。葉は希望とかアイディアを表すのですよね?
中川)そうなんだけど、もう少し踏み込んで、活力とか生命力の象徴と捉えていいんじゃないかな。青々としているのは、野心も活力もすべて、過去ではなく現在のものであるという証。
永坂)とはいえ、この人は何が何でも10本全部抱えて向こうまで進まなきゃいけないんですね。本当につらいなあ。そもそも、誰のためなんでしょうね。この家はこの人のものなのかよその人のものなのか、それもわからない。
ところで、このシャツの袖が少々気になります。全体的に質素な服装で、このシャツも別段高価ではないんでしょうけど、汚れていなくて綺麗に真っ白です。
中川)そうだね、【ソード8】みたいにどろどろに汚れていない。
白は清廉潔白のシンボルです。彼は汗は流しただろうけど、血は流していない、命の危険を冒してもいない。
永坂)そうか、棒を力ずくで勝ち取ってはいないんだ。
中川)そう。戦利品ではない。戦利品を表すなら、【ワンド6】は勝ち取った、【ワンド5】は戦闘中。【ワンド10】の場合は、一本ずつ自分で集めた、気づいたら集め過ぎちゃった、というところかな。
永坂)託されたにしろ、自発的に動いたにしろ、この人は能力高いんですね。能力が高いがゆえに、えらい目に遭ってしまっている。
中川)さっき着ているシャツは白い、白は清廉潔白のシンボルと言ったでしょ。この人物は、生真面目さのせいで、能力の高さゆえに、苦しくても棒を下ろすわけに行かず、困っているんだな。
永坂)それでもって、ゴールに着けば着いたで、良いことが待っているかと問えば、そうとは限らない・・・。
中川)無事に棒を下ろせるのだから、今抱えている苦労は終わるでしょう。何かしらの区切りもつくでしょう。でもやれやれ万歳とは約束できない。悲観的になる必要はないけれど、楽天的になれもしない。
ハッピーになるかどうかはこれからの展開次第なわけで、占いで出た他のカードをチェックして、対策を練る必要があります。ハッピーエンドが約束されるなら、【カップ10】正位置、【ペンタクル10】正位置、【ソード10】逆位置が出てこないとね。
永坂)今までこの人の視界の悪さを軽く見ていましたけど、ろくすっぽ何も見えていなさそうですね。でもって、一歩一歩進みながら、こつんこつんと棒が鼻やおでこに当たっていそうですね(笑)。高い鼻のてっぺんから側面にかけて、真っ赤に擦れてそう。
中川)そうだ、この姿勢では、棒が顔に当たっていそうだ(笑)。痛そうだな。今まで「腰や背中を痛めないよう注意」と助言していたけど、顔にも気をつけなきゃいけないんだ!
2024年8月 横浜マクトゥーブにて