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コートカード:【クイーン】【キング】

今回のトピックは「コートカード:【クイーン】【キング】」です。

インタビュアー)今月は、コートカードの【クイーン】と【キング】を取り上げます。前者は女性を、後者は37才以上の男性を表します。

中川)少しばかり復習しましょう。コートカードの原則は、1) そのスート(注・ワンド、カップといったマーク)の特性を表す、2)習熟度・成熟度を見定める、3) 占いの中に思い当たる人物がいれば当てはめる、でした。

スートの特性:
ワンド: 気力、情熱、野心、向上心
カップ: 心の動き、感情、ロマンス、創造性
ソード: 知性、判断力
ペンタクル: 実務 経済活動 健康

そして、【クイーン】は自分の特性を内に秘める、【キング】は特性を行動として出す、との捉え方があります。

【クイーン】は内に秘めるだけではなく、「これから行動に移るけど、今はまだ準備の段階」とも読みます。そういった判断は、占いで出たカード全部をチェックして行います。
【キング】は率直に行動します。

人物として当てはめる際、性別や年齢は柔軟に考えます。「相談者は初老の男性だから【キング】」などと解釈を狭めてしまうと、拾えるはずのヒントを拾い損なってしまいます。
初老の男性が【クイーン】で表されると違和感はあるけれど、占いの内容を検討して当てはまるのであれば、拡大解釈でも受け入れる。

 

インタビュアー)タロットカードの世界は明らかに男子優勢で、女性は男性の保護下にいるという印象なのですが、中世という時代の産物だから、仕方ありませんね。

中川)「思いを秘める」の【クイーン】は、女性的な優しさ柔らかさを示します。中世に、しかも宮廷に属する階層に、キャリア上昇志向ばりばりの女性はいなかったでしょう。
あえて四人の中で現代のキャリア女性の感性に最も近い女性をあげるとすれば、【ワンドクイーン】です。彼女は賢女の鑑といったキャラで、味方につければとてもありがたい存在。でも逆位置で出たら最悪(苦笑)。

ただし、さっき言ったように、「行動に移る前の準備をしている」という解釈を見落としてはいけません。優しく状況を見守っているばかりとは限らない、と心得ないとね。

 

インタビュアー)【キング】に話を移します。

中川)冒頭に挙げたコートカードの原則の二つ目に、習熟度と成熟度という記載がありましたね。
ペイジ、ナイト、クイーン、キングの順で、習熟度と成熟度が高まって行くわけです。

一つの例として、ワンドの4枚を並べてみましょう。

最初の三枚は、背景に権威の象徴であるピラミッドが描かれています。けれど、キングには描かれていません。
【ペイジ】【ナイト】【クイーン】は、権威の力を借りて進んでいかなければならないのだけれど、【キング】は自分自身が権威である、という解釈がなされています。

 

インタビュアー)これだけ連載を続けていて今更ですが、カードの絵柄には細部に渡って真っ当な理屈が伴うのだ、と改めて納得します。

ところで、【キング】は皆それなりに着飾っているのに、【ソードキング】は非常に質素です。これはどうしてでしょう?

中川)着ているものはごく薄い水色です。これは平和を表す色です。【ソード】は剣を持っていて、決断なり判断といった、白黒決着をつけるスートです。
剣で切り裂く、神ではなく人が行うのだから、慈悲の心が込められていなければいけない。
飾り気の無さは「余計なものが無い」、水色のシンプルなローブは「平和の心慈悲の心」を表していると理解してもらいたいです。

 

インタビュアー)ではもう一点、【ペンタクルキング】は柔和な顔つきなのに、鎧をまとった足をチラ見させているのがミスマッチに感じられますが、これはどうでしょう?

中川)この足をどう理解するか、僕も随分迷いました。「財をつくるため、社会的基盤を強固にするためには、時には争いごとも必要」とほのめかしているかな、と考えていた時期もありました。

今は、防御のためと捉えています。鎧は戦うための道具なんだけど、防御の道具でもあるんですよね。「自分の大切な人や物を攻撃しようとする相手には、即座に受けて立つ」というメッセージと言うとわかりやすいかな。

鎧は身体の一部につけるのではなく、全身を覆うものだから、【ペンタクルキング】もローブの下に鎧一式をまとっていると考えるのが妥当です。攻撃性をひけらかすつもりはないから、片足の一部分だけを見せれば十分なのでしょう。

 

インタビュアー)ウェイト氏(ライダーウェイト版タロットの製作者)は、「【ペンタクルクイーン】は遠い異国の女王である」と説明しています。でも調べると、コートカードの全員のみならず、小アルカナの人物たちも、ペンタクルに登場する人々は一様に白人という肌の色ではありません。これには何か意図があったのでしょうか?

中川)なんだろう・・・。是非ともパメラさん(パメラコールマン・スミス:ライダーウェイト版タロットの画家)に聞いてみたいところです。

一説によると、パメラさんが描いた原画は失われていて、複写の色付けは各出版社に任せられたそうです。

ペンタクルのカードの人物たちが一律に浅黒く描かれているのは、パメラさんの意図ではなく、後年製造した出版社の意図だった可能性がありますね。先のウェイト説を採用すると、パメラさんは【ペンタクルクイーン】だけを浅黒く描いたのに、後に出版社がペンタクルの人物全員もそうした、という可能性もあり得ます。

 

インタビュアー)他のスートのカードにも、浅黒い肌の人たちはいます。農民ならば、兵士ならば、砂漠や荒野を越えて来たのであれば、白い肌であっても浅黒くなるのは自然ですね。

中川)パメラさんに尋ねたいことはたくさんあります。今日取り上げたカードだけでも、【ワンドクイーン】の黒猫、【ペンタクルクイーン】の兎、【カップキング】のジュゴンなどなど、直接パメラさんに尋ねなければ、わかりようがないじゃないですか。黒猫なんて、やたらと強気でこちらを見つめているしね。

2022年5月20日 オンライン形式で収録

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