対談・ワンド9
今回のお題は「ワンド9」です。
中川)今日は・・・(タロットカードをめくり)・・・【ワンド9】。タロットの中には単純明解なカードが何枚かあるんだけど、その中でもこれは単純明解です。いろいろ話が展開するか、ちょっと心配。
永坂)このお兄さんは頭に包帯を巻いているし、顔はむっとしていますから、実は希望があるよと告げられても、素直にそうとは受け止めらない、見つけて嬉しいカードとは思えません。この男性は兵士ではないですよね。何を睨んでいるのでしょうか?
中川)この人物は兵士じゃなくて一般庶民です。睨んでいるのは敵でしょう。敵と戦わなくてはいけないのだから。
先月の【ワンド8】もそうだったけど、このカードの棒の並び方が乱雑でしょ。
【ワンド9】も「急いで対処せよ」というメッセージを示していると捉えます。
この人物はピンチに陥っているんだけど、結構屈強です。過去に何度も戦って勝っていて、腕も意思も強い。「俺は簡単には負けないぜ」とほのめかしているんじゃないかな。そもそも、ワンドというスートは気合を必要とするものだし。
永坂)占いで【ワンド9】が出ると、大概の相談者さんは、困惑した、どう反応しようか迷う、といった表情をされます。そうですよね、このカードを肯定しようと試みても、「空は青くて山は緑」といった程度。屈強さを明解に表していないし、身に付けているものはありきたりだし。
中川)華やかさはないね(苦笑)。地味でね。意味としたら、正位置では「防御できる」。逆位置は「防御し損なう」。このカードの場合、防御しなくてはいけない問題は、新規のものではない。前に同じことや似たことを経験しているはずなんだ。
永坂)青い空と緑の山という希望の暗示があるにはありますが、協力者といった仲間の存在は見当たらないから、周囲からの援助は期待できなさそうです。孤独と捉えるのは考えすぎですか?
中川)孤独とまでは読まないけど、単独というか、一人きりだね。協力者がいたら描かれているでしょう。【ワンド4】みたいに。
平穏に見える空と山は、対人関係だけを表すのではなくて、自分自身の生活環境と呼んでもいいんじゃないかと思う。悲観しなくていいんだけど、本人はそれどころじゃない。
永坂)同じように過去の痛みを表すカードに、【ソード3】逆位置と【ソード9】正位置があります。救いがないというか、負け戦というか、単純に痛みを受け入れざるをえないというカードです。
【ワンド9】正位置はというと、戦い抜くという意味合いがあるから、先程の二枚とは違って、希望の光が射してはいる。だったらもう少し期待できるような絵であって欲しかったのに。
中川)そうなんだ、占い師はお客さんに「守り切れます、希望のカードです」としっかり言わないといけない。
【ソード9】も【ワンド9】も過去の痛みと向き合うのだけど、違いはというと、【ソード9】が向き合う相手は、過去の自分の内面。【ワンド9】が向き合うのは、過去の自分の行動や言動。
永坂)あー(ため息)。こういった細いところをきっちり詰められるか詰められないかが、占い師の腕の差ですね。
ところで、怪我をしていて包帯を巻いている箇所は頭というのは意味がある気がするのですが、どうでしょう?頭イコール思考の場と。
中川)あまり考えたことはなかったけど、気にした方がいいかもね。自尊心と結びつくと捉えていいのだと思う。自尊心というと、【カップ】のコートカードや【ペンタクル4】がすぐ浮ぶだろうけど、【ワンド9】もそうなんだ。
永坂)武器は描かれていませんから、この人物は握っている棒で戦うんでしょうか?
中川)どうなんだろう。わからないなあ。疲れて寄りかかっているだけのように見えるけど、武器は見当たらないから、やはりこの棒で戦うんだろうな。
この対談の冒頭で、「過去に似た経験をした」といった話をしたでしょ。この点を忘れないで強調して欲しい。占いの依頼者には、「思い当たる過去の経験と、今抱えている問題とに、冷静に向き合ってください」、と必ず伝えなければいけないんだ。【ワンド9】に当てはまる問題は、過去を振り返らないことには解決できないから。
永坂)過去の問題と冷静に向き合う・・・・。そう言われても、掘り返したくない経験や、無かったことにしたい経験もありますよね。冒頭で【ワンド9】は単純明解なカードと言われましたが、意味合いはそうであっても、解決への道のりはなかなか大変そうです。占い師のコミュ力が問われる一枚だと痛感しました。
2024年10月 横浜マクトゥーブにて