対談・ワンド6
今回のお題は「ワンド6」です。
中川)(タロットカードをめくり)・・・【ワンド9】、またしてもワンドのカードが出たね。
永坂)三ヶ月続いてのワンドです。びっくりです。 我々二人には情熱や向上心が足りていない、とタロットに告げられているのでしょうか・・・・。
中川)うーん、それはあるかな・・・、あるかも(苦笑)。
永坂)【6】のカードは、4枚とも正位置では肯定的な穏やかな意味合いを示します。正位置でも否定的な意味を持つのが普通にあるタロットカードの中で、【6】は極めて例外的なのですよね。
そして、【6】には逆位置でも極端にまずい事態を示してはしないという特性もあります。
中川)そうなんです。まずは6という数字について話を始めましょうか。ヘキサグラム(六角形)は特徴的です。完全な完成形とは呼べないけれど、安定ではないけれど途中経過としての完成形。
永坂)【ワンド4】は安定そのものですね。それでもって【ワンド5】ではそれが完全に崩れてしまう。その後【ワンド6】で落ち着きを取り戻すという流れです。そして、取り戻してもまだ紆余曲折は続く。
中川)そう、とりあえずひと落ち着きという具合。ヘキサグラムは、昇り行く上向きの三角形と降り行く下向きの三角形が融合する形であって、中間地点ではあるんだけれど、陰陽が統合されたと考える。6というのはそういう数字なんだ。
昇り行くものはいずれ降り、降り行くものはいずれ昇ると、これは【X運命の輪】の象徴と繋がります。いつ立場が逆転するかわからないと。
【ワンド6】に話を戻すと、馬に乗っている人物と脇を歩く人物に身分の違いはあるけれど、それはぎちぎちの絶対的なものではなくて、入れ替わることもあるんだ。
永坂)身分差がそう大きくないというのは、服装ですぐわかります。馬に乗っているこの男性は、高貴な身分には見えませんもの。高貴な坊ちゃんだったら、【ワンド5】くらいの格好をしているはずです。
中川)そうそう、そうなんだ。この瞬間はリーダーではあるけれど、恒久的ではない。
永坂)当番制?
中川)そうとも言える。
永坂)タロットに登場する馬は皆立て髪がふさふさと描かれているのに、【ワンド6】のは違いますね。立て髪が無いに等しいのは、なぜでしょう?
中川)あ、本当だ。・・・・きっとロバなんだ、これ。
この光景を「イエスキリストのエルサレム入城」(注・十字架での死後、復活したイエスキリストがエルサレムに戻ったとされる)と捉える見方もあるんだけど、これがロバだとすると、この説が益々強調されるな。傍にいるのは、ヨハネとかマタイとかいった弟子たちではないかと。
永坂)その説は、 さっきの当番制とは相反します。けれど「戦わずして得た勝利」という解釈とは完全に合致。
中川)そうね。鎧を着ていない、剣を持っていない、戦利品も持っていない。勝利を表すのは月桂樹の冠だけ。
永坂)もちろん立証はできないんですが、ロバという仮説からキリスト説が強まった気がします。
中川)この【ワンド6】のロバを、生き物ではなく模型と捉えている説を読んだことがあります。足ではなくて車輪がゴロゴロして進むといったもの。トロイの木馬みたいなものを想像すればわかるかな。だから身体は緑色の布で覆われていて、下半身はまったく描かれていないんだと。
永坂)でもって「勝利なり成果なりは、所属する組織全体で得たもの」という意味合いを思い返す。
中川)そこは忘れてはいけない点です。独りよがりとは対極にあるんだ。
永坂)逆位置では「好ましくない結果を出す」ではなく、「良い結果が遅れる」と。
中川)もう一つ、「リーダーの座から降りて歩く側に回る」というのもあげておきます。でもこの場合は、不始末をして引きずり降ろされるでも、体調が悪いといった、降りなきゃいけない事情があるわけではない。【6】は逆位置でも穏やかさを残している、と冒頭で挙げたよね。
永坂)さっきの当番制説に戻ると、青年Aの番が終わり、青年Bにロバを譲る、という具合なんでしょうか。
このパレードが5人の行列だったとして、全行程を5等分に分割して、一人ずつ騎乗すると想像してみました。「あの黄色い壁の家を過ぎたところで俺と交代ね」なんて。
中川)月桂樹は勝利の証だけど、名誉という意味合いも含むよね。
タロットが表す勝利には【ソード5】や【XV悪魔】といった強欲さや物欲そのものといった要素を示すものがある一方で、【ワンド6】には名誉といった、澄んだ気質というか、浮世離れっぽさとも呼べる感性を含みます。その点をきちんと気に留めておくのが大切です。
2024年11月 横浜マクトゥーブにて