大アルカナのカード:【XX審判】
今回のトピックは「大アルカナのカード:【XX審判】」です。
インタビュアー)立派な天使がどーんと登場して、またしてもキリスト教色が強いカードです。
中川)「最後の審判」を描いていると言われています。人間が死んだ後に、天国へ行けるか地獄に落ちるかと判断がくだされる瞬間ですね。でも占いの場合は、この宣告がされるわけではないから心配ありません(笑)。
インタビュアー)ネット他いろいろ調査したところ、「復活」と「解放」の二つのキーワードを見つけました。占いの際は、この二つのどちらが当てはまるかを判断すればよろしいかと?
中川)そうです。【XX審判】の一枚だけではわからない場合が多いです。他のカードや相談内容と照らし合わせることで、これを復活と読むか解放と読むかがわかります。
インタビュアー)意味合いは、ウィキペディアも他のサイトも先生も、概ね似通っています。
正位置の解釈は、再生、ステップアップ、復活、復縁、改善、発展、敗者復活、祝福など。先生は霊的な目覚め、信念の勝利、習慣意識目的を変えて結果を出す、と付け加えます。
中川)棺に注目してください。人間の足下にある木の箱が棺です。これは古い生き方とか考え方を示しています。それらを改めることで、新たな自分を得ることが可能になる、物事が新たな局面を迎えられる、だから棺から抜け出なさい、と【XX審判】は示しています。
インタビュアー)年齢を重ねて行くと、自分にとって時代にそぐわないといった不要な習慣やこだわりなど、人は誰しも抱え持っているのでしょう。棺から抜け出るという行為は、着ている服を脱ぎ捨てるといった感覚と似たようものと捉えて良いでしょうか?ただ脱ぐだけではなくて、脱いだ物を捨てるという感じ。
中川)そうね。【XVI塔】も解放を示しますが、これはがぶっ壊すという破壊力を伴います。【XX審判】が促す変化は柔らかいものです。
一枚脱ぐと見た目はぐっと変わりますよね。【XX審判】がもたらす変化は、劇的ではないけれどあやふやでもない。
【XX審判】の他にも天使が描かれているカードは他にも何枚かありますが、それらには何らかの現象が起きている、と僕自身は考えています。神の使いである天使は、何か働きかけをする。天使が働きかけた現象なり兆しなりを人間が受け止めて、考え行動に移す。
人間が勝手に自分の胸の内で考えて変化や解放を得るのだったら、天使が降りて来る必要はないんですから(笑)。
インタビュアー)逆位置の解釈は、努力は報われない、取り返しがつかない、過去にとらわれる、見通しが悪い、消滅、再生復活復縁叶わない、執着、気力の低下、再起不能、といったあたりです。先生は時間の浪費、行き詰まり、挫折、悪い知らせ、過去の記憶や手法にしがみつく、を挙げています。
中川)せっかく棺、つまり古い習性から抜け出ようとしているのだけれど、何らの原因のせいで棺の中に閉じこもってしまう、というイメージです。そんなだから、考え方が切り替わらない、結果が出せない。
インタビュアー)停滞と読むのもアリですか?
中川)停滞とは違います。停滞は「頑張ってあがいているけど結果が出せない」でしょ。【XX審判】逆位置はあがいていないもの。
【XVI塔】のような破滅はない。
【XV悪魔】正位置のような堕落的な感覚もない。
【ソード3】や【ソード10】みたいな痛みもない。【XX審判】逆位置は孤立していて、進歩がない、つまらない。
占いで鍵や結論に出た時は、「計画を練り直しましょう」と提案します。
インタビュアー)絵柄について言及します。
大天使ガブリエル→神のはたらきかけ
人間たち→救済される魂
裸→無垢
棺→古い考え方 捨てるべきこだわり
旗の十字→救済
トランペット→ヨハネの黙示録の「ラッパを吹く天使」を暗示
中川)ヨハネの黙示録に関しては、僕は不勉強なので言及しません。これは聖書の中でもフィクション中のフィクションだから、のめり込んではいけないとだけ言います。
タロットを理解する上で聖書全般を勉強するのは好ましいけれど、やはり偏り過ぎはよろしくないと思います。
タロットのベースはキリスト教ばかりではありません。いろいろな古代宗教や占星術のエッセンスが混ざり混んでいます。例えをあげると、【III女帝】は金星の女神という、占星術由来の存在です。
インタビュアー)先生はある時、「【XX審判】は『本来の自分を出す』」と言われました。
自分を変えたいのだけれど、今までと違う新しい自分になろうとするのではなく、本来の自分に戻るということですね。
素直さが欠落しているとの自覚がある、もともとひねくれていたのではない、あるきっかけからの積み重ねでそうなってしまった、だから、素直さを得るのは本来の自分に戻ることである、と。
中川)そう。そのひねくれた感性が「棺」です。
つまり、人間は誰でも本来の自分に戻り解放されると示している点は、とても大きい意味を持つと僕は捉えています。
占いから逸れ宗教的な話になってしまいますが、タロットは版によって大きく絵柄が異なるケースが多々あります。
マルセイユ版といった古いタロットには、棺から抜け出そうとしている人間が、三人の親子しか描かれていません。
これを大勢に描き変えたのが、このライダーウェイト版の挿絵を描いたパメラさん(パメラ・コールマン・スミス:1878-1951)と言われています。この描き足しは大乗仏教的な「すべての人は救済される」との教えに影響を受けた結果と、僕は捉えています。たくさんある中でも、このライダーウェイト版の【XX審判】が示す、救済は選ばれた者だけではなく全員に来る。
ウェイトさん(アーサー・エドワード・ウェイト:ライダーウェイ版タロットの作者:1857-1942)とパメラさんが活躍した時代には、大乗仏教の教えは西洋に伝わっていたはずですから、僕のこの自説はまったく外れてはいないんじゃないかな。
2021年12月22日 秋葉原マクトゥーブにて