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対談・ソード5

今回のお題は「ソード5」です。

永坂)小アルカナが56枚ある中で、よりによって【ソード5】という、何とも歓迎しづらいカードが登場しました。まあいつかは登場するわけで、それが今回だっただけですけど。

中川)兵士だと思われる緑色の服の男は戦いの勝利者で、後ろにいる二人の男は負けて海に向かって去って行くところ。勝つか負けるかというカードです。
負けた側は破産に追い込まれるとか、社会的に酷い目に遭う、といった事態に追い込まれるのかもしれないという、厳しい状況です。ここで理解しておいて欲しいのは、正義は勝つとの概念を結びつけるのは間違い、ということ。

 

永坂)何ごとであれ、自分の思い通りの結果に辿り着くと、「やっぱり自分が正しかったんだ」と捉えがちですし、「天が味方してくれた」とも思い込んだりしますよね。占いにエースのカードが混ざっていたら、確実に。

中川)そうね。ソードは判断とか考えを表すから、【ソード5】正位置を開いて、「戦わなくてはいけなかったけど、結局自分の判断は正しかった」と思ってしまいがちでしょう。でもそれはよろしくなくて、正義の概念とは切り離さなくてはいけない。

 

永坂)戦いの絵柄ですし、雲はやたらとギスギスしているから、占いのお客さんもこのカードには微妙は反応をしますよね。
晴れやかさがありませんね。このドヤ顔もすっきり受け止められない。先生から頂戴したノートに、「どんな手口を使っても勝利に向かわなければいけないと時もある、その時はそうする」と書いてあります。つまり、強行突破でOK。「問答無用、相手をぶっ潰せ」。キツいなあ。

中川)そう、勝ちたいのなら、理屈も何も傍に置いて、力技だけで乗り切れという意味合いです。
戦いのカードは【ワンド5】、【ワンド7】、【ソード5】と3枚あります。

【ワンド5】はいいとこ坊ちゃんたちが集まっての、生命の危険とは無縁の戦い。【ワンド7】は高いところから下に向かって戦うという、優位に立っている戦い。両方とも武器は棒だから、少々叩かれてもすぐに死には結びつかない。でも剣は違う。

 

永坂)この強行突破といった思考は良し悪し分かれますよね。受け入れにくい人がいて当然でしょう。占いの場で最終結果や鍵として【ソード5】が出て、「手段を選ばないで構わないから、やっつけちゃえばいいです」と告げられても、すんなり受け入れられるかどうか。抵抗感があってもおかしくありません。

中川)物事をルールに則って進めなければ気が済まない人とか、【ワンド6】のように集団の調和を重視する人には、【ソード5】が示す勝ち方は受け入れがたいでしょう。後味が明らかに悪い。
絶対的な白黒決着を好まない人もいますよね。訴訟といった場でも、全面勝利には拘らず、多少相手に譲ってもいいかと思う人はいるはず。【ソード5】はその意識とも相反しますね。

 

永坂)お人好しかどうかではなく、多少の損をしても正当な手法だけで裁判を進めて、後味が悪くない結末を迎えたいという理論には共鳴できます。
ところで、先生のノートに「勝っても有頂天にならないよう、助言すること」というメモがあります。

中川)今のこの時期なら、フジテレビの騒動がその例だなあ。どう考えても、上層部は有頂天だったでしょ。

 

永坂)「驕る平家は久しからず」ですね。この緑色の服の中に、あのテレビ局の上層部の慢心がぱつぱつに詰まっている、と想像しちゃいます。絶頂期を過ぎて久しいのに、コンプライアンスに対する社会の意識も変わっているのに、浮かれっぱなしのままでいた結果があれだと。

中川)昔の感性のままでいて、今度の問題の重さに気づき損なったわけなんだな。あんな惨事にならないよう防ぐ手立てはいくつもあっただろうに、浮かれていたから気づかなかった。
永坂)【ソード5】は深いんですね。
このカードの厳しさは、逆位置はもっと意味合いが悪くなるというところです。「損して得とる」「改心して善人になる」といった「逆転できた、めでたし、めでたし」ではなく、破滅、破壊といった、ただただ絶望的な結果が待ち受けている。悲しいほど救いがない。

中川)占いでこのカードが逆位置で出た時は、すぐに手を引くよう、助言します。あれこれ対応策を練って実行しても、問題は悪化して行くだけだから。

 

永坂)【ソード5】は深い。そして無情。
カードの正位置を恋愛に当てはめてみて、手段を選ばない強行策で勝利を得てもどうかなと思ったのですが、元から恋愛を作為的に捉えている人、そのような形での勝利に後ろめたさを持たない人なら、万々歳なんでしょうね。歪んだ感情以外の何物でもないけれど。

中川)僕は【ソード5】に呪いとか呪縛といったものが成就するという、不吉とも呼べる空気感を感じます。極めて歪んだ感情なんだけど、誰しも僅かにそういったものを持っていると思うのです。聖人君子ってそう滅多にいないじゃない。
なんでこんなおどろおどろしいカードがタロットにあるかというと、人の心の中には歪んだ部分があって、恥じたり隠したりはできても、抱くのは避けられないということ。【ソード5】も【小アルカナ・日常の一部】なのです。

2025年1月 オンラインにて

 

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