「大アルカナのカード:【XIII死】」
今回のトピックは【ⅩⅢ 死】です。
インタビュアー)今回取り上げる【XIII死】は、インパクトが極めて強い絵柄のせいで、タロットの中でも極めて知名度の高いカードです。
イメージは「さなぎが蝶になる」と先生はおっしゃいます。現状のものが新しい形に変化して、好ましい方向に展開する、との解釈です。
中川) 絵はおどろおどろしいのだけど、怖いカードではありません。正位置だと、過去と違う新しい形で進む、再生が始まる、心機一転、古いものが終わり新しいものが生まれる、と捉えます。逆位置は、停滞、思い通りに動けない、成果が出ない、といったあたり。
インタビュアー)いつものように複数の占いサイトを検索しましたが、今回は困るほど多様な見解が見つかりました。
ウィキペディアでカードでの正位置の解釈は、停止、終末、離散、破壊、死の予兆、死屍累々、と示されています。逆位置は、再生、新展開、上昇、挫折からの立ち直り、といったあたりです。正位置逆位置が先生と正反対です。
他のサイトをチェックすると、先生と同じ「正位置は吉・逆位置は凶」、ウィキペディアと同じ「正位置は凶・逆位置は吉」に分かれます。
中には「いろいろあるけど、つまるところ正位置も逆位置も吉」というのもありました。こういった現象はどう理解すべきでしょうか。
中川)ここが易とタロットの違いです。易には易教という正典とがあります。正典に「これはこうだ」と解説されているから、占い師はそれをもとに解釈をしますが、タロットには正典がありません。
そうなると、占い師の判断で解釈が異なります。【XIII死】は、その顕著な例の一つです。
前に挙げた、「表千家も裏千家も武者小路千家も茶道である」という例えを思い出してください。
インタビュアー)「死」という名前でこの絵柄だったら、死に直結している、と思い込んで当然ですよね。
中川)一般の方々が誤解するのは当然だから、不要なストレスを発生させないよう、占い師はしっかり説明をしなければいけません。健康に関する相談であれば、特に注意するべき。
死ぬという行為は日常的に起こる出来事ですから、肉体の死を示すのであれば、小アルカナのカードが担います。【XIII死】は大アルカナですから、このカードが示すのは、もっと抽象的な死なのです。
インタビュアー)占いで【XIII死】が心理の位置で出た時と、鍵で出た時の解釈はどのようになるのでしょう?
中川)心理だったら「新しい動きをしたい、再生したい」「停滞している状況を克服したい」、鍵は「今までと違う動きをしてください(正位置)、逃れられない変化を受け入れて、今までと違う動きをしてください(逆位置)」です。
インタビュアー)類似するカードはありますか?
中川)【XV塔】です。類似点は変化。【XV塔】における変化は急激だったり劇的だったりで、痛みを伴ったりもますが、【XIII死】にそれらの要素は含みません。骸骨が乗っている馬は、ゆっくり進んでいるでしょ。
インタビュアー)骸骨と馬の話が出たところで、絵柄の説明に進んでいただきます。
中川)骸骨を死神と捉えることもあるみたいですが、僕は単に肉体の死と捉えます。
鎧は威厳とか高貴さ。旗の絵の薔薇は、女性が持つ生産性、つまり「生」を表しています。馬は本能。白は純潔。
右側の黄色い男性は聖職者か権力者。お迎えに来た白馬に、命乞いをしています。
子供の一人は目を背けていて、もう一人は呆然と眺めている。
死に対する人々の反応を象徴していると考えられています。既に死んで倒れている人物は、王様なのかもしれません。遠くに見える船は、「人生は流れに従って進むもの」との暗示です。
インタビュアー)これらだけでは、再生とか吉という印象がつかめません。日の出は向上との印象が得られますけれど、端っこにちょこんとあるだけだから、希望が湧くという感じには至らない感じです。
中川)そうねえ・・・。一回死ななきゃいけない時がある、と考えてみましょう。
イニシエーションと呼ばれる儀式に、「一旦死んだことにする」的な行動を含んだりしますね。南方の島の慣習だったバンジージャンプとか、カルトの入会式で葬儀みたいな行為をするとか。
再生には先立って死が必要なわけです。一旦すべてを更地にするというか。
転職でも恋愛でも、一旦足を止めて、置かれている環境、プラス要素、マイナス要素などを全部並べて冷静に検証すると、新しい方策が見えてくる。それを実行しましょう、ということですね。
僕は【XIII死】の逆位置は、思いとおりに動かない、堂々巡りに陥った、といった読み方をしていて、破壊とか絶望といった衝撃的な捉え方はしません。
そういった強い要素が必要であれば、【XV塔】【ソード3】【ソード9】【ソード10】が出てくるはずですから。
【XIII死】に怖いとか不吉といった印象を持っている方は、どうぞ捨ててください!イメージは「さなぎが蝶になる」、メッセージは「いよいよ生まれ代わる時期が来た」なのですから。
2021年5月21日 秋葉原マクトゥーブにて