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日本人らしさ

Q. 「日本人らしさ」と尋ねられて、すぐに浮かぶものは何ですか?
A. そうですね。まずは外見。東洋な顔つきっていうのかな、そう見ちゃいますね。なんて、古い感性が染み込んでいる昭和の人間は、これだから困る(笑)。

世の中はどんどん変わっているから、こんな時代遅れなコメントなんかしていられませんね。ラグビー日本代表とか、「あれっ?」っていう外見の選手が日本国籍だったりするし、きっちり国歌を歌っていたりするし。

Q. 人との接し方はいかがでしょう?
A.「おもてなし」とか「外国人旅行者に優しい」とかわざわざ言うけれど、僕は海外の旅先で接客されて嫌な思いをしたこともないし、そうあからさまに「おもてなしは日本の素晴らしさ」と強調する気はないなあ。

緊急時に秩序が保たれると言うけれど、どこの国だって、秩序が保たれている時はニュースにならないでしょう。世界中を調べてはいないけれど、給水所とかできちんと並ぶとかって、日本人だけじゃないと思います。
海外の暴動の映像なんかが時々流れますけど、それは暴動が起こったからニュースになって発信されるわけでしょ。暴動が起こらない以上は、ニュースにはならないわけです。

Q. 試合観戦後、スポーツスタジアムのゴミを拾ってしまうのは、日本人だけでしょう。
A. あれは日本発信のエチケットですよね。これは誇れる日本人らしさかな。

あと、壊れた陶器の茶碗とかに金を流し込んで繋いで、元々の茶碗より一段上のものに仕立てちゃったりするじゃないですか。あれも誇れるものですね。

Q. 握手しながらお辞儀しちゃうという行動については?
あれは反射神経だと思うんだな(笑)。
必要じゃないけれど、どうしてもやっちゃう。「挨拶の時は頭を下げる」って、幼い頃から刷り込まれているから、せずにはいられない。日本人らしさはここにあるなあ(爆笑)。

Q. 八百万の神が存在すると言われる国ですから、日本人らしさと一神教の教えの融合は難しいと思われます。
多分ね、一神教を受け入れることは難しいと思います。
一神教は「食べてはいけない」といった、「あれをしなさい、してはいけない」黒と白とで分断するような面があるでしょう。白か黒かをつけたくない、つけない方が好ましい、グレーの色味をゆらゆら薄くしたり濃くしたりして楽しむのがよい、というのが日本人の特質なのでしょうから。

Q. その割には、死刑廃止には案外はっきりNOと意思表示しているように見えます。
死刑制度は「国家の暴力だ」と言う説もあって、世界的に廃止の方向です。
でも日本人の感情はそう向かないですよね。赤穂浪士も含め、昔の日本には、復讐という仇討(あだうち)制度があって、仇討は賛美される誇らしい行為で、殺人に当たらなかったわけです。
その意識が今でもどこかにあるんだと思います。近代国家になって、個人対個人という仇討は禁止されたけれど、今度は死刑制度のもと、国家が個人に代わって仇討をしてくれるようになったと。

キリスト教には赦しがあるけれど、日本人の宗教には赦しがないですね。
八百万の神に浄めはあるけど、赦しがない。
そう考えると、「報復されないために秩序を守る」といった意識なり知恵が回るのかもしれません。
被災した人達が給水所できちんと並ぶとかね。メディアが有名人のスキャンダルを報道しまくるのも、それを視聴者がばっちり観ちゃうのも、「ほら、ばちがあたった!」という意識を共有しているのかもしれません。

Q. ラグビーワールドカップ日本代表チームの海外出身選手達の活躍を眺めて、どのような思いを持たれましたか?
ラグビーはイギリス発祥だからということで、イングランドとかスコットランド、ウェールズと地域で分かれて参加していますね。そして、植民地政策の名残とかで、国籍という枠にとらわれていない。
国籍とか関係なく、「この土地に根付いて頑張る」という、あのシステムはいいなと思います。日本のコンビニなどで、真摯に働くアジア人の定員さんの励みになったのではとも思います。

ラグビー的に考えると、従来ルール通りに則って地域のコンビニを守ってくれている外国人は、日本人枠の中に入る仲間ですよね。
こういった融合が二十一世紀の日本の姿でしょう。時代遅れな僕が抱く外見のイメージとは、ちょっと違うけど(苦笑)。

2019年10月28日 秋葉原マクトゥーブにて

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