大アルカナのカード:【Ⅳ 皇帝】
インタビュアー)【Ⅳ 皇帝】の男性は飛び切り怖い顔をしているので、カードが出ると少々おののいてしまいます。反射的に、「すみません、以後はもっと気を引き締めて行きます」とか言っちゃいそうです。
中川)そうね。人間として描かれている絵の中で、最も怖いというか、威厳のある顔です。座っている台座が石で出来ていますね。石は揺るぎないもの、強固な意志を表します。
感情に左右されず、自分の考えを貫きながら目的を達成する権力者が【Ⅳ 皇帝】です。「自分自身が作り上げた正論に基づいて行動する」がメッセージです。
インタビュアー)「自分自身の正論」というからには、世間の目がどうこうというより「本人にとって正しいか」という点にこだわるということでしょうか?
中川)本人が作り上げた正論だから、客観性は問われません。第三者が見てどう思うかは別です。
相談者が社長を目指していて、占いでこのカードが正位置で結論に出たら、「自分の理想通りの社長になれる」です。「なりたいものになる」であって、常識的に考える公平性とか社会正義とかは、意識されません。
インタビュアー)もし世に出る前のルパン三世とか怪盗キッドが仕事の相談にやって来てこのカードが出たら、「大盗賊として華々しく活躍出来ます」というわけですね?
中川)その通り(大爆笑)、「真人間になります」ではない。
【Ⅳ 皇帝】に社会正義は関係ないのです。荒っぽい言い方をしてしまうと、不倫でもパワハラでも公金横領でも「はい、望み通りやり遂げられます」というカードです(苦笑)。
社会性を求めるのなら【Ⅴ 法王】、規則や法律を守ることが必須なら【ⅩⅠ 正義】が出てきます。
インタビュアー)多少、イメージが掴めて来ました。ところで、【Ⅳ 皇帝】は足元から鎧を覗かせています。少しだけですけど。
中川)【ペンタクルキング】と一緒です。【ナイト】は全員ばっちり鎧姿を見せていますが、【ペンタクルキング】と皇帝は上からローブをまとっていて、鎧はちらりとだけしか見せていません。
威嚇してはいないけれど、「いざとなったら戦う」という強い意志は示しています。
インタビュアー)背景に描かれているのは、険しい山々です。乾いていて、厳しさが感じられます。
中川)【カップ7】にも険しい山が描かれていますね。
山は成功を意味するのですが、「乗り越えるべき課題」でもあります。一直線に成功にたどり着くのではなく、険しい道のりを超えなければいけないとの暗示と捉えます。
インタビュアー)【皇帝】は父親を表わすカードでもありますね?
中川)【女帝】を母親と読んだように、単純に父と読みます。【クイーン】と【キング】のカードを母親父親と捉えるケースは時々ありますが、【女帝】と【皇帝】はよりダイレクトに表します。
家庭内の問題での占いで鍵が【皇帝】正位置で出たら、「お父さんを味方につけてください」、逆位置なら「お父さんの説得が必須です」というケースはあります。勤め先での相談だったら、「お父さんを」ではなく「社長なり直属の上司を」でしょう。性別は問いません。
インタビュアー)逆位置は「計画の頓挫」で、立てても駄目になる、もしくは計画自体が甘い、であると。
中川)そうです。頓挫にもいくつも理由があるわけですよね。
計画が駄目になることを暗示するカードは他にもあります。全く予想外の要因、たとえば今年の新型コロナウィルスの蔓延だったら、【ⅩⅥ 塔】が出るはずです。
【Ⅳ 皇帝】逆位置は、計画そのものが甘かった、杜撰だった、だからそこを修正しましょう、というところですね。
インタビュアー)そもそも、おっかない顔のこの人物は、逆位置ではより厳しい空気感を漂わせるのでしょうか?
中川)おっかなさを、すべてマイナスと捉えるではなくても良いんじゃないかな。
逆位置を心の優しさと読む場合もあります。慈悲の心が勝ってしまい、優しさが邪魔をする、情が裏目に出る、そして計画が頓挫する。
たとえば、あるプロジェクトをめぐって、大きな方針転換が起きた。早く部下たちに知らせを届けないといけないのに、今まで努力をしていた部下たちを想うと上司が速やかに切り出せない時のような場合にも逆位置で出ます。
石の台座に座る権力者だから、練り上げた計画に忠実であるべきで、感情に左右されず、強さを出す時なのです。
インタビュアー)いろいろ伺って来て、【Ⅳ 皇帝】に対する苦手意識が軽減して来ました。
中川)一体、彼は何を見据えているのでしょうね。
目の前の景色は、だだっ広い砂漠という「無の世界」なのか、数万の武装した兵士なのか。
ローブと冠を脱ぎ捨てて、「いざ戦へ」と大軍を率いて険しい山を越えて行くのだろうか、なんていろいろ想像すると楽しいですね。
2020年7月22日 秋葉原マクトゥーブにて