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大アルカナのカード:【XV悪魔】

インタビュアー)ついに今回、タロットカードの中で最も恐れられている【XV悪魔】が登場しました。いつ見ても圧倒されるビジュアルです。

中川)【XVI塔】と【XV悪魔】はいい勝負ですね(苦笑)。でも【XV悪魔】とは目が合ってしまうから、やはりこちらの方がおっかない。
キリスト教の影響を最も受けている四枚のうちの一枚です。他の三枚は、【XVI塔】【XIV節制】【XX審判】。


インタビュアー)一般的に、神と敵対するものが悪魔と呼ばれます。その最高位にいるのがこのお方で、堕落天使ルーシファーとも、その仲間のバフォメットとも言われています。

中川)占いで【XV悪魔】が出てひるまない相談者は、そうそういないでしょう。逆位置は事態が好転して行くとの意味合いだけれど、やはり絵柄が絵柄だから、穏やかではいられない感じですよね。
占い師はそのあたりに注意して、相談者に不要な緊張感を与えないよう対応しなければいけません。

 

インタビュアー)様々なサイトを検索すると、正位置の解釈は、裏切り、拘束、堕落、依存、誘惑、憎悪、憤怒、嫉妬心、破滅、惰性に流されて悪い方向へ行く、と出ました。
逆位置は、解放、再生、目覚め、執着を手放す、といったあたりです。わずかに例外を見つけはしましたが、大多数のサイトは、逆位置を「事態は好転」と示しています。

中川)それらで良いと思います。
僕の解釈を付け足すと、正位置は欲。それと恐れによる支配。物質的な繁栄も挙げておきます。恋愛においては、肉体だけの関係を表します。
逆位置は、腐れ縁を断つ、依存から立ち直り自立する、を加えます。

僕は腐れ縁や依存を「ぬるま湯」と言い換えることがあります。
「よろしくないとわかっている状況にズルズルと居続ける」ということです。絵を見るとわかります。男女が繋がれている鎖がゆるいですよね。支配されることを受け入れているという、よくない事態です。

 

インタビュアー)絵柄の説明を続けます。「魔女は蝙蝠に化身して家々を訪ねる」という中世ヨーロッパの言い伝えがあって、その頃からキリスト教美術に登場する悪魔には蝙蝠の翼が描かれるようになったとか。

中川)頭についている山羊の角は、貪欲とか本能。逆さの五芒星は堕落。人間は林檎を食べて堕落したアダムとイブ。彼らについている角と尻尾は、悪魔と同化しているという証。
先ほど言ったように、鎖の緩さは、「その気になれば外せるのに、外していない」というもの。

葡萄は物欲を示しますが、ワインの原料なので、酔いをもたらすということから依存とも関係します。
けれど同時に、聖なるものの象徴でもある。聖書にもちょくちょく出てくるでしょう。ワインは堕落の象徴であると同時に、聖なるものの象徴でもある。

山羊の角は、キリスト教的に見ると悪魔の堕落の象徴と捉えられているけれど、いろいろな古代の宗教にとって、山羊は聖なるものです。
生贄として神に山羊を捧げるという行為は、旧約聖書にも書かれていますよね。山羊もワインと同様、堕落の象徴であると同時に、聖なるものの象徴でもある。

この「聖なるものと堕落するものの同一性」は翼にも当てはまります。天使の翼は聖なるもの、悪魔の翼は堕落の象徴。
上昇するものは下降するものであり、下降するものはまた上昇するものであるという、前にこのインタビュー欄で紹介した【X運命の輪】と同じで、物事は回転して行くとの原理が納められているんです。

インタビュアー)単に恐怖と捉えていたカードに、このような深いものが隠れていたとは!

中川)カードのメッセージは「悪魔と戦って倒す」ではなく、「抱えている恐れや執着や悪しき習慣から、自分を解き放つ」と捉えてください。
繋がれている鎖を自らの手で断ち切る、と想像すればわかりやすいかな。

当たり前のことですが、欲や執着に過度に固執してしまう人はいくらもいます。
よくないとの自覚があっても、そうです。努力して自己解放が出来ればそれに越したことはないけれど、誰もが出来るわけではないですよね。

占いの結論や鍵のポジションに【XV悪魔】が現れたら、周囲のカードを検証して、いつ・どんな手法で・一人でまたは誰かに協力してもらって、などと戦略を練る。
そして上昇を目指す。精神的な痛みを伴うこともあるだろうけれど、努力次第で上昇は可能です。

最後に、【XV悪魔】正位置が吉となるケースも挙げます。意味合いに「物質的繁栄」が含まれているから、ビジネス的には吉なのです。
依頼者が「起業したい、計画はこんな具合、どうでしょう」と相談に来て、占いの最終結果に【XV悪魔】が出たら、喜んでもらって結構です。

 

2021年7月24日 秋葉原マクトゥーブにて

 

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